日本語のツガが学名になった珍しい例です。かつては、「栂普請」という言葉を見たり、聞いたりしましたが、これはツガの材質のよいものを選び、
家を建てることが贅沢だったからです。最近では住宅建築に使われるのは、まず珍しいと考えてよいでしょう。
分布は、関東以南の本州一円、四国、九州さらに屋久島に及んでいます。
植栽は行われていないので、天然林の減少とともに木材が目に触れることも少なくなっています。
心材と辺材の色の差は少なく、材色は少し紫色を帯びた淡桃褐色で、針葉樹材の色としてはかなり特殊です。
注意すると、白いチョークの粉をまぶしたような部分が、飽(かんな)がけ した材面に見えることがあり、これに気づくとツガをほかの木材と区別するのは容易です。
この現象は、フロコソイドという有機物によって起きるツガ属の木材に共通の特徴です。
材質は針葉樹としては重硬で、平均気乾比重は0.50です。早材から晩材への移行は急で年輪ははっきり見えます。
一般に天然生の木は成長が遅いので年輪幅が狭く、それだけ化粧的な価値が高くなりますが、
ツガ材の場合も年輪幅が非常に狭くて、材面が美しいものを糸柾と呼んで古くから珍重しています。
また、かつては木造の建物がネズミに齧られることがありましたが、ツガにはその害が出にくいといわれ、その点からも建築材として好まれたようです。
用途は建築材(柱、長押、鴨居)のほか、器具・包装材、車両材、パルプ材などです。