- 無垢フローリング施工時の隙間(クリアランス)と突き上げ
- 無垢フローリング施工時にスペーサーを使う理由
- 無垢フローリング施工に最適なスペーサー
- 無垢フローリング施工時に使用するスペーサーのサイズと作業性
- 無垢フローリング施工時に使用するスペーサーの色と作業性
- 無垢フローリング施工時に使用しているスペーサーの使用例
無垢フローリング施工時の隙間(クリアランス)と突き上げ
無垢フローリングを施工する際には、巾に対して隣り合うフローリング同士の隙間(クリアランス)をおおよそ0.2mm~0.5mmほど持たせます。意図的に隙間(クリアランス)を設けるという事です。隙間(クリアランス)が全くないと、無垢材フローリングが膨張し、反って、力の逃げ場所が無ければ表面に突き上げてきます。無垢材の反りや突き上げを意図的に起こそうと思えば含水率など関係なく非常に簡単に再現できます。
参考資料:無垢フローリングのすき間(クリアランス)の必要性について
その隙間(クリアランス)を均等に持たせるためにスペーサーの使用を推奨しております。スペーサーは、施工する無垢フローリングの巾や施工する季節や天気によって膨張収縮を繰り返すのでそれぞれで厚みを調整します。スペーサーの間隔はおおよそ2 尺(606mm)ピッチを基準に差し込みます。ほんの少しの隙間なのですが、これが無いと無垢フローリングの突き上げ現象が起こる可能性が高くなります。
どの様な木材の樹種がどれくらい動きがあるのか気になりますよね。オークやメープルなど硬い木材の方が膨張収縮が起きにくく、杉、桧、桐など柔らかい木材の方が膨張収縮が起きやすいのか?起きにくいのか? では、なぜ箪笥に意図的に柔らかい桐材が使われているのか?桐箪笥の引き出しはなぜ隙間が無く密閉性が高いのか?それぞれの樹種を木材性質一覧表でご確認いただけます。
YouTube動画で見る オーク無垢材フローリングによる膨張実験動画
オーク材が反ったあと、突き上げてくる様子を見ることができます。
木材の中においてオーク材が固いから膨張収縮し難いとは言えません。
無垢フローリング施工時にスペーサーを使う理由
ではなぜ?無垢フローリングを施工する際にスペーサーを使う必要があるのでしょうか?無垢材フローリングは室内の湿気の吸放出を繰り返します。梅雨から夏場にかけて湿気が多い時期には空気中の湿気を吸って膨張します。逆に、冬場など乾燥時期には湿気が無いので収縮します。1年を通して湿気の増減と同じように膨張収縮を繰り返しています。
特に無垢材の巾方向に関しては、長さ方向の10倍ほど膨張収縮が起こると言われていますので巾反りには要注意です。無垢フローリングの場合は、エンドマッチ(木口・長手継ぎ)は、軽く付く程度にひっつけます。無垢材フローリングは、含水率の変化によって膨張したり、収縮したり、反り、曲がりと様々な寸法変化が起こります。それが原因で床鳴りすることもございます。ひとつの対策としては、お部屋の湿度を50%前後に調整しておくことで木材は平衡含水率に近づき、寸法が安定し反りや割れなどの狂いが生じにくい状態になります。
この様な膨張収縮を考えた工事の施工は身近なところでも見ることができます。例えば、高速道路のつなぎ目や鉄道の線路のつなぎ目など、同様の目的で隙間(クリアランス)を見ることができます。自動車や電車に乗車した時にガタンガタンとなる部分ですね。これは気温や湿度で膨張して伸びた時のことを考慮して隙間(クリアランス)を持たせてあります。逆に冬に気温が低くなると収縮するということになります。
せっかくお施主様が無垢フローリングを選んでも、間違った施工をしてしまうと取り返しのつかない事にもなりかねません。また、無垢材フローリングそのものが原因ではないにもかかわらず、無垢フローリングのデメリットとして紹介されることもしばしばございます。
やはり合板フロアーしか施工したことが無い大工さんは、無垢材における膨張収縮にあまり意識がないために反りや突き上げが起こる可能性が高いような気がします。ちなみに合板フロアーや挽板フローリングは、クリアランスは必要とせずにぴっちりと貼っていくのが基本となります。
無垢フローリング施工に最適なスペーサー
さて、無垢フローリング施工時にスペーサーを使う事った方が安心して施工できるとして、どの様なスペーサーを使用するのが良いのか少し考えてみます。最終的には0.2~0.5mmほどの隙間(クリアランス)ができればいい事なのですが、施工者からしてどの様なスペーサーが使いやすいのでしょう。
無垢材フローリング施工時に使用するスペーサーに求められるのは、厚みが変わらないこと、作業性が良い事です。厚みが変わらないと言えば、そんなに難しいリクエストではないように思えますが、紙製の様に軟らかい素材だと施工中に破れてしまったり、厚みが変わってしまいがちです。施工時、ボンドとフロア釘やフロアステープルで固定していきますが、ボンドが固まるまでスペーサーはそのままです。施工範囲が広くてスペーサーを使い廻すようであればあまりお勧めできません。プラバンなど貼りこみ時に厚さが変わらない素材の方が使いやすいです。PPバンドも使用できますが、かなり厚みが様々なので注意して選ぶようにしましょう。
無垢フローリング施工時に使用するスペーサーのサイズと作業性
無垢フローリング施工時に使用するスペーサーの作業性です。これも貼る範囲やサイズなどにもよりますが、私はプラバンを小さく切るよりなるべく大きく切った方が使いやすいです。小さく切ってしまうと翌日に抜くのが非常に面倒です。ホウキなどで一気に抜く方法も試してみましたがフローリングの塗装に傷が付きそうなので、面倒でも真上に抜くのが最良なのでは?と思っています。
無垢フローリング施工時に使用するスペーサーの色と作業性
また、注意しないといけないのが色です。無垢フローリングを施工する際のスペーサーにクリアー(透明)は使わない方が無難です。1度だけ使ったことがありますが、透明なので刺さっているのに気が付かずに蹴ってしまってつまずいたりします。
それに画像でも確認できると思いますが、透明だと工事中に床に落ちていても気が付きにくいです。作業性がとても悪くなりがちです。なるべくなら施工する無垢材フローリングの色みを考えて目立つ色のスペーサーを使用することをお勧め致します。
画像の赤いスペーサーのサイズは、8x8cmで厚みは0.4mmです。この辺りが施工する側にとっては使いやすいと思っております。
スペーサーは貼り込み時の補助具ですので、クリアランスが取れているかは必ず目視にてご確認ください。
無垢フローリングの取り扱いと施工方法
無垢フローリング貼りこみ時の注意点としては以下となります。
- 靴跡が付きますので、作業の再は綺麗な足袋や靴底にウエス等を巻いて施工してください。
- エンドマッチ(木口・長手継ぎ)は、軽く付く程度にしてください。通常、スペーサーを噛ましてのクリアランスは不要です。
- 張り込みは当て木を使用し強く叩き込まずに通常0.3mmのクリアランス(隙間)をとってください。
- スペーサーはプラバン、PP バンドなど季節によって使い分けてください。(時期によって膨張収縮します。冬場は0.5mm 位必要です)
- スペーサーの間隔は2 尺ピッチを基準に差し込んでください。
- スペーサーは貼り込み時の補助具ですので、クリアランスが取れているかは必ず目視にてご確認ください。
- スペーサーは接着剤が硬化するまではさんだままにしてください。
- フローリングと壁部、壁際は5 ~ 10mm程すき間をとってください。すき間は巾木で隠してください。
- 掃き出し窓のサッシの納め、敷居、ドア枠、框、床見切り納めの場合も突きつけずに必ずクリアランスをとってください。
- 施工は予め雄実(凸)部に直径2mm位の下穴を開け接着剤とフロアービス工法、フロアーネイル工法のいずれか併用でご使用いただくか、無垢フローリングの施工に適したフロア用ステープルを接着剤と併用でお使い下さい。
- フロア用ビス、フロア用ネイル、フロア用ステープルは凸部へ約45度の角度でそれぜれの専用工具(金槌、専用エアツール等)を用いて打ち込んでください。
- フロア用ビス、フロア用ネイル、フロア用ステープルは38mm以上の物をご使用ください。
- 接着剤は木質フロアー用の物を使用してください。
※水性木工用ボンドや酢酸ビニル樹脂系接着剤は使用しないでください。