【埋め木とは?】河井寛次郎記念館で出会った“くにゃくにゃ”の衝撃

投稿日:2025年06月06日
◆「埋め木」という技術、ご存知ですか?
木工における「埋め木(うめき)」とは、傷や節抜け、ひび割れなどの欠損部分を木材で丁寧に埋めて修復する伝統技法のことです。木の風合いを損なわず、美しく補うための職人の知恵が詰まっています。実はこの「埋め木」、無垢フローリングや家具の補修でもよく使われる身近な技法です。しかし先日、京都にある河井寛次郎記念館を訪れた際、私はこれまで見たことがないような“驚きの埋め木”に出会いました。 

◆臼をひっくり返した「テーブル」に隠された技
館内の一角に置かれていた小さな丸テーブル。何気なく眺めていたそのテーブル、実は「古い臼」をひっくり返しただけのものだったのです。
かつては力強く臼として用いられていた器物が、今では静かに佇むテーブルとして再生されていました。
その発想は、単なる転用にとどまらず、日本的な「見立て」の精神が極めて高い次元で結晶したものといえます。用途を変えながらも、物の記憶と気配をそのままに残し、新たな命を与える――
それは、実用と美意識、そして時の重なりを読み取る深い審美眼がなければ成し得ない、極めて詩的かつ知的な行為です。このような静かな驚きをもたらす展示に触れるたび、日本の美意識の奥深さにあらためて感嘆させられます。

そして、その臼の裏面に施された“埋め木”を見た瞬間、私は思わず息を呑みました。
河井寛次郎記念館臼のテーブル

 

 

◆くにゃくにゃと曲がった埋め木が、木の年輪に溶け込んでいた
一般的な埋め木は、丸や四角、楕円などのシンプルな形状が多いですが、この臼の裏面に施された埋め木はまったく異なりました。木の年輪に沿って、くにゃくにゃと波打つような有機的な曲線を描いており、それが見事に木目と調和していました。まるで「魅せる修復」として意図的にデザインされたようにも感じられ、まさにアート作品と呼べる埋め木です。瓢箪や蝶々、富士山など縁起物の埋め木も目にしますが、こちらの臼の埋め木はそれらとは全く異なるものでした。

河井寛次郎記念館臼のテーブル 
◆「埋め木」は“隠す”ではなく“活かす”ものへ
私は無垢材を扱う仕事柄、日頃から埋め木には慣れ親しんでいますが、これほど自由で大胆な埋め木を見たのは初めてでした。そして驚いたことに、これまでに3回もこの記念館を訪れていたにもかかわらず、今回初めてその存在に気付いたのです。訪れるたびに新しい発見がある——それこそが河井寛次郎記念館の魅力だと改めて感じました。 
◆無垢フローリングにも活かせる「埋め木」の発想
無垢フローリングは、木そのものの個性や経年変化を楽しむ素材です。節や割れが出ることもありますが、それらを埋め木で補うことで、風合いを活かしながら長く使い続けることができます。埋め木は、単なる修復技術ではなく“木を活かす工夫”なのです。
無垢フローリングの埋め木の例
無垢フローリングの埋め木の例

 

◆まとめ:埋め木は“木との対話”の技法
今回の訪問を通じて、「埋め木」の本質が「直す」ことではなく、「活かす」ことであると強く感じました。河井寛次郎記念館で出会った、あのくにゃくにゃと曲がった埋め木のように、木と向き合い、木の流れに身を委ねながら形を決めていく——そんな柔らかな発想こそが、木工の本当の魅力なのかもしれません。 
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木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/

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カテゴリー: 木材

中古の無垢フローリング使えるのでしょうか?なぜ、あまり販売されていないの?

投稿日:2025年05月29日
無垢フローリング中古
剣道場に70年使用されていた無垢フローリング

無垢フローリングを検討するにあたり、エイジングやアンティーク、古材調など、少し古めかしい雰囲気に仕上げたいと要望されるお施主様もいらっしゃいます。実際に、当社でも栗アンティークフローリングイージーカントリーフローリングワーミースポルテッドフローリングなどをラインナップしております。ただし、これらは全て新品であり中古品ではありません。

アメリカでは、パイオニアミルワークス社などが、中古品の無垢フローリングを取り扱っています。そのほとんどが、工場で使われていたものや体育館で使われていたものなどになります。古民家で使用されていたものはほとんどありません。

単純に、貼ってある無垢フローリングを剥がして販売すればいいっていうものではないんです。一般的には解体現場ではパワーショベルなどの大型重機を使ってミンチ解体していきます。床材も壁材も天井材も構造材も一緒に解体していくわけです。そして、木材、鉄、コンクリートなど素材ごとに分別して廃棄処分します。

しかし、中古の古材販売となるとなかなかそういう訳にはいきません。解体するにあたり、巨大な梁を残したい、大黒柱を残したい、床の間材を残したいとなると、解体も手順を追ってしなくては行けませんので通常よりも何倍も時間と手間が掛かります。数丁しかない梁や大黒柱だけでもかなりの時間と手間が掛かるのに無垢フローリングを綺麗に次に使えるようにはがすとなると、きっと貼るときよりも時間と手間が掛かることになるでしょう。少し考えてみると、よくある無垢フローリングの本実加工(凹凸)では、凹凸部に釘が刺さっています。釘頭は木材に埋まるように施工されているはずです。その釘をバールで持ち上げ、釘頭を浮かし、綺麗に釘を抜いていく… もちろん、木材にひびが入らないように、実が割れないように気を使いながらの作業になります。もう、想像もできないくらいの手間が掛かってしまいます。

先ほど、パイオニアミルワークス社の話で、工場や体育館などが多いと言いましたが、かなり大きな面積で無垢フローリングが施工されていた現場にて、そこそこ綺麗に剥がして本実加工(凹凸)を再加工することで商売が成り立っているようです。かなり歩留まりが悪いと想像します。もちろん同じ樹種の同じサイズの新品無垢フローリングよりも中古の無垢フローリングに方が販売価格は高くなります。

日本においても古材は安くはありません。希少価値が高く、販売するまでに結構な手間が掛かります。中古の無垢フローリングも同様です。大黒柱や梁の様に一部分に中古の無垢フローリングや中古の羽目板(壁・天井)に使うのが現実的かもしれません。

また、中古の無垢フローリングの場合は、ササクレや段差など様々な不具合個所が出る可能性があり、なにかしらの責任問題が発生する可能性も高いです。新品の無垢フローリングよりもよりも高価で不具合個所が多いかもしれない中古の無垢フローリングは、販売もし難いですし、よくよく考えると採用をためらうお施主さんも多いという事になります。

もし、無垢フローリングを割安で入手したいとの考えから中古の無垢フローリングをご検討いただいているとしたら、無垢フローリングのアウトレットの方が使いやすいかもしれません。杉無垢フローリングや桧無垢フローリングがございます。ぜひ、無垢フローリングアウトレットにアクセスしてみて下さい。

木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/

なくてはならない木工所 木材の特殊加工と特殊技能

投稿日:2024年11月10日

全国的に木工所が減少している。その原因の問題は後継者問題…

いつも特殊な加工を請け負ってくれる木工所がある。こちらの木工所で作る部材は、当社にとっては無くてなならないもの。

こちらの会社の加工機は、元々特殊加工用に製作されたものなのでこの世に1台。50年ほど使われているそうですが、メンテナンスできるのは社長のみ。

きっと木材に限らず特殊加工を請け負う会社は同様の事例が多いのではないかと思う。せっかくの特殊技能が途絶えてしまうのは残念だ。残念だし非常に困る。

また、社長もお年を召されてきたので少し心配でした。が… 息子さんが跡を継ぐそうだ。それはそれで父親として心配らしい。ぽっと帰ってきてすぐにできるような品物じゃないから。だそうだ。

なんとなく一安心。良かったと思う。

 

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熊本県にやってきました。

投稿日:2024年07月31日

熊本県にやってまいりました。
高い青空最高です!熊本県は水の都とも言われ、水道水は全てミネラルウォーターなんだそうです。水も空気も美味しいです。

素敵なお仕事の話もたくさんいただけました。来年度には、熊本県内で剣道場床工事が予定されております。

20年前位前に大変お世話になっていた九木センターさんにも立ち寄りました。今も昔も活気があり素晴らしい集材能力です。

九州学院さん、熊本武道館さんも見学させていただきました。それぞれに工夫を凝らした素晴らしい道場床でした。大変勉強させていただきました。

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執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

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アメリカ木材小売販売大手のガナールランバーを見学に来ております。

投稿日:2023年09月28日
アメリカ木材小売販売大手のガナールランバーを見学に来ております。
とっても広い敷地で引き込み線路までありました。
小さなビスから構造材やサッシまで販売されていますが木材の在庫量にはびっくりです。


10フィートの帯鋸は圧巻の大きさです。刃の長さは60フィート以上にもなったそうですよ。2002年まで実際に使用されていたそうです。92年間も稼働していたんですって。

役物は棚で丁寧に仕分けられていて、見やすい、選びやすい、買いやすいです。木材はドライブスルー方式です。それぞれQRコードで価格や材の特徴等もすぐに確認できるようになってました。

ダグラスファー C&BTR S4S

ダグラスファー 上小無節 3.65x140x38mm 4方モルダー

それにしてもなかなかの価格でした…

Ganahl Lumber

2600 Del Amo Blvd, Torrance, CA 90503 アメリカ合衆国

http://www.ganahllumber.com/

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