LL45直貼りフローリングに上貼りはNG|遮音等級は維持できず低下【マンション改修】

投稿日:2025年11月11日
LL45直貼りフローリングに上貼りはできないの?
LL45直貼りフローリングに上貼りはできないの?
LL45直貼りフローリングに上貼りはできないの?

LL45直貼りフローリングに上貼りすると遮音性能は必ず落ちる|マンションリフォームで最も誤解される“危険な施工”を徹底解説

 

結論

LL45直貼りフローリングの上に別のフローリングを上貼りしても、遮音等級LL45は保持できません。性能はむしろ低下します。

理由は、上貼りによって床の質量と剛性が増え、固有振動特性が変わり、軽量床衝撃音(LL)帯の振動が伝わりやすくなるためです。

また、メーカーが提示する「LL45」はあくまでスラブに直貼りした試験条件の値であり、現場の遮音性能を保証する制度ではありません。

LL45対応材を重ねても性能は保証されません。LL45直貼り材はスラブに施工して初めて性能を発揮するためです。

LL45とは?|直貼り構成(スラブ+接着剤+クッション+表層)の性能である

LL45は、軽量床衝撃音(LL)に対する遮音等級で、スリッパ歩行音や小物落下音などの軽い衝撃音がどれだけ下階へ伝わりにくいかを評価する指標です。

重要なのは、LL45は床材単体の性能ではなく「スラブ+接着剤+クッション層+表層材」という床構造全体の性能であるという点です。

なぜ上貼りで遮音性能が落ちるのか

1. 上貼りで床が「重く・硬く」なることで軽量衝撃音が悪化する

軽量衝撃音は「硬くて重い床ほど伝わりやすい」という性質があります。上貼り施工は床の剛性を上げてしまうため、LL45を満たしにくくなります。

2. 直貼りの遮音の命である「クッション層のたわみ」が失われる

直貼りフローリングは裏面のクッション層が衝撃を吸収することで性能を発揮します。しかし上貼りによって荷重が増し、クッション層が潰れて本来の遮音メカニズムが機能しなくなります

3. 上貼り状態の遮音データは存在しない(性能は保証不能)

直貼り材は上貼りを前提に試験されていないため、メーカーも性能を保証しません。構造が変わるため、表示等級を根拠にすることはできません。

LL45対応材にLL45対応材を上貼りしても性能は出ない理由

「LL45同士なら静かになるのでは?」という誤解が非常に多いですが、これは成り立ちません。

LL45の直貼り材は、あくまでスラブに直に施工したときに性能が成立します。

上貼りすると以下の問題が起き、遮音等級の根拠が完全に崩れます:

  • 直貼り接着剤の性能が正しく機能しない
  • クッション層が圧縮され機能喪失
  • 振動特性が試験体とは別物になる

そのため「LL45×LL45=より静か」には絶対になりません。

直貼りと二重床、スラブ厚の関係|現場で安定してLLを確保しやすいのは直貼り

一般的に誤解されている部分を明確に整理します。

  • 直貼りは“階高が取れないからの妥協”ではありません。 実務では、二重床より直貼りのほうが所定の遮音性能を確保しやすく、結果としてスラブを薄く設計できるケースが多いのが実態です。
  • ここでよく語られる「150mm」「200mm」はスラブ厚の話であり、階高(天井までの高さ)とは別概念です。
  • 「二重床のほうが遮音性能が安定して高い」というのも誤りです。 二重床は施工難易度が高く、現場差が大きいため性能のバラつきが出やすい工法です。

現場で安定した軽量床衝撃音性能を出しやすいのは直貼りです。

上貼りで起きるトラブル例

  • コツコツ音の増加
  • 下階からのクレーム
  • 建具干渉・段差発生
  • 接着界面の多層化による浮き・鳴き
  • 管理組合審査での却下

管理規約のLL45の落とし穴

管理規約の「LL45以上であれば可」という記述は、

「上貼りでもLL45が出ますよ」という意味ではありません。

規約はあくまで最低基準であり、実際の遮音性能の維持は施工者・施主の責任です。

正しいリフォームの選択肢

1. 既存直貼りの撤去+直貼り仕様での貼り替え(最推奨)

遮音性能を維持したい場合はこれ一択です。

2. 管理組合へ「上貼り不可」判断の確認

後のトラブル回避に有効です。

3. 建具クリアランス・納まりの事前チェック

上貼りは段差・干渉問題を起こしやすいため、当たり前ですが設計段階で解決する必要があります

よくある質問(FAQ)

Q1:既存LL45の上に、LL45対応材を上貼りすればさらに静かになりますか?

なりません。逆効果です。 LL45直貼り材はスラブに施工して初めて性能を発揮します。

Q2:メーカーのLL45表記があるなら安心ですか?

いいえ。カタログは特定条件での試験値であり、現場遮音を保証するものではありません。

Q3:直貼りと二重床、どちらが静かですか?

現場で安定した性能を出しやすいのは直貼りです。 二重床は施工の難しさから性能のバラツキが出やすい工法です。

Q4:上貼り以外に改善策はありますか?

最良策は既存撤去+直貼り仕様への貼り替えです。

Q5:LL45ではなく、LL40対応の直貼り材を上貼りしてもダメですか?

LL45よりも遮音等級が低い材を上貼りしても、既存のクッション層は潰れるため、性能はやはり保証されません。管理規約違反のリスクは残ります。

Q6:上貼り後に薄いカーペットを敷けば、遮音性能は回復しますか?

カーペットでは軽量床衝撃音の一部を緩和できる可能性はありますが、根本的な床構造の問題(剛性の上昇)は解決できません。LL45の等級を回復させる根拠とはなりません。

まとめ

  • 上貼りすると遮音性能は必ず低下する
  • LL45は床構造全体の性能であり、床材単体ではない
  • 直貼りは現場で安定した軽量衝撃音対策ができる工法
  • LL45同士を重ねても性能は保証されない
  • 管理規約のLL45は最低基準であり、性能保証ではない
  • 最適解は「既存直貼り撤去+直貼り仕様での貼り替え」

※遮音性能はスラブ厚・配筋・接着剤・施工精度など条件に依存しますが、上貼りが軽量床衝撃音を悪化させるリスクは系統的に高く、LL45の再現性は失われます。

 

上貼り可否の無料診断

図面(スラブ厚・床構成)や管理規約をお送りいただければ、上貼りの可否・想定リスク・最適工法を専門家が具体的に助言します。

  • 既存床:LL等級/厚み/クッション層の有無
  • スラブ厚・配筋(不明でも可)
  • 管理規約の改修条項(該当ページの写真で可)

 

関連:LL45挽き板フローリングマンション無垢フローリング施工時の注意点

 

木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 東京都江東区新木場1-6-13 木のくに屋ビル4F 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/

【お知らせ】11月22日(金)臨時休業のお知らせ

投稿日:2025年11月06日
【お知らせ】11月22日(金)臨時休業のお知らせ

平素より無垢フローリング専門店 木魂
剣道場床建築工房をご利用いただき誠にありがとうございます。

誠に勝手ながら、2025年11月22日(金)は
ビルメンテナンスのため休業とさせていただきます。
当日は電話・メールでのお問い合わせ対応もお休みとなります。

翌営業日より順次対応いたしますので、
お客様にはご不便をおかけいたしますが、
何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

株式会社 五感
木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

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マンション管理規約の常識を疑え─二重床の仕上げ材にLL45が“不要な理由”

投稿日:2025年10月31日

マンション管理規約の常識を疑え──二重床の仕上げ材にLL45が“不要な理由”

 

『マンションの管理規約における床フローリング工事には遮音等級LL45以上の床材を使用すること』

この一文は、マンションの管理規約によく記載されています。
その他、同じような例としては以下のような文章もよく見受けられます。

例1
専有部分の床仕上げ材を変更する場合は、管理組合が定める遮音性能基準
(床衝撃音遮音性能LL-45以上)を満たす材料を使用し、施工しなければならない。

例2
(床材の変更)
第◯条 床材(フローリング等)を変更する場合は、管理組合の承認を必要とする。
2 承認を申請する場合は、床衝撃音遮音性能がLL-45以上であることを証明する資料
(試験成績書等)を添付しなければならない。
3 上記基準を満たさない工事は認めない。

例3
専有部分内の床仕上材をフローリングその他の材料に変更しようとする場合は、
当該材料がJIS規格等に基づく軽量床衝撃音遮音等級LL-45以上の性能を有することを
確認したうえで、管理組合に事前申請し、承認を得るものとする。

例4
床材の変更に際しては、管理組合指定の遮音性能(LL-45以上)を満たす製品を使用すること。
工事申請時には、製品の遮音性能試験結果(メーカー発行の試験成績書)の写しを添付すること。

どの例も、仕上げ材には遮音等級LL45以上の床材を使用することになっています。

ただ、これは不要な場合もたくさんあるんです。

 

多くのマンションでは、リノベーションやリフォーム時に「LL45以上の床材を使用すること」が管理規約や工事申請書に明記されています。しかし、実際の建築音響の原理から考えると、二重床構造のマンションで仕上げ材に「LL45性能」を求める必要性はほとんどありません。

それにもかかわらず、全国のマンション管理規約は“床材そのものにLL45性能を義務付ける”という矛盾した表現を使い続けています。本記事では、この問題の背景を建築の専門的視点から読み解き、施主が正しい判断をできるよう解説します。


 

先ずは、マンションにおける主な床構造を紹介いたします。
二重床構造と直貼り工法の木質フローリングです。
西高東低で直貼りフローリングが多いと言われています。
まずは、乾式二重床と直貼り木質フローリングの説明から…

乾式二重床

乾式二重床は、上部面材を防振ゴムを有する支持脚等で浮かした構造になっており。その多くはベースとなるパーティクルボードの上に仕上げ材となるフローリング等が施工される。また、居室への踏み込みや家具などの設置による沈み込み値作の為に。室四週の壁際の仕様は、やや硬いゴム支持脚や在来木質根太等が使われることが多い。さらに壁との取り合い部分には巾木が取り付けられる。軽量点・重量床衝撃音レベル・低減量が比較的大きい乾式二重床は、 面材の中間層に下地合板やアスファルト系またはゴム系の重い製芯マットを追加した仕様のものが多い。 また、床下空間にグラスールなどの吸音材が挿入されたものもある。

軽量床衝撃音レベル低減量に影響を及ぼす主な要因として、 室四隅、壁際部の防振ゴムの使用、幅木の種類と取り付け方法、 隙間の有無、また室四周を除く一般部の防振ゴムの硬度、形状、断面や突起の有無、 制振マットの有無、吸音材の有無、床仕上げ、高さなどが挙げられる。また、重量衝撃音レベル低減量に関しては、幅木とフローリングの隙間による上部面材とコンクリートスラブ間の空気層の空気抜けの程度、 上部面材の面密度と剛性が影響要因として挙げられる。 床仕上げ材として直張り木質フローリング、カーペット、塩ビシート、畳、薄畳などを施工した場合の 軽量衝撃音レベル低減量は、仕上げ材の低減性能に大きく左右される。

 

直張り木質フローリング

直張り木質フローリングは、直床の下地のクッション層からなる、木質部の基材には合板やMDF(中密度繊維板)が使われることが多いが、それ自体は材料が硬すぎるため鋸溝加工を施し柔軟化することで、軽量床衝撃音レベル低減量が大きくなる。
 上部の木質部分は、柔らかい方が軽領主化衝撃音レベル低減量は大きくなるが、歩行感の悪化や床鳴りを発生させることもある。株のクッション層は、柔らかさが適度な材料であれば熱いほど軽量床衝撃音レベル低減量は大きくなる。ただし、この場合も歩行感とのバランスが重要となる。また、クッション層の厚さが十分であっても材質が硬い場合には、軽量床衝撃音レベル低減量が極端に小さくなることもあるので注意を要する。

 

遮音等級 軽量音(LL)椅子・物の落下音等 重量音(LH)足音・走り回る音等
L-35 通常では聞こえない ほとんど聞こえない
L-40 ほとんど聞こえない かすかに聞こえる
L-45 小さく聞こえる 意識するほどではない
L-50 聞こえる 小さく聞こえる
L-55 発生音が気になる 聞こえる
L-60 発生音がかなり気になる よく聞こえる
項目 説明 LL-40 LL-45 LL-50 LL-55 LL-60
床衝撃音 ひとの歩き回り/飛びはねなど かすかに聞こえる・遠くから聞こえる感じ 聞こえるが意識することはあまりない 小さく聞こえる 聞こえる かなり聞こえる
床衝撃音 いすの移動音/おもちゃの落下音など ほとんど聞こえない 小さく聞こえる 聞こえる 発生音が気になる かなり気になる
生活実感・プライバシー 上階の生活気配 上階の物音がかすかにする・気になることは少ない 生活の多少を感じる・スプーンを落とすとわずかに聞こえる 生活状況がある程度わかる・話し声が聞こえる 生活行為や話し声が分かる・椅子移動音が聞こえる かなり明確に聞こえる

 

項目 説明 LH-30 LH-35 LH-40 LH-45 LH-50 LH-55 LH-60 LH-65 LH-70 LH-75 LH-80
床衝撃音 子供が飛び跳ねる音/重い物音 通常では聞こえない ほとんど聞こえない 遠くから聞こえる 聞こえても意識しない 小さく聞こえる 聞こえる 良く聞こえる 発生音がかなり聞こえる うるさい かなりうるさい うるさくて我慢できない

1. 結論:二重床なら、仕上げ材のLL45性能はほとんど不要です

先に結論を言うと、マンションの二重床構造において遮音性能(LL値)を決めているのは「床材」ではなく「床構造」です。二重床の支持脚、防振ゴム、床下空気層、スラブ厚、床パネルの質量といった要素が遮音性能のほぼ全てを左右します。

したがって、本来は「LL45の床材を使用すること」という管理規約がなくても、二重床そのものがLL45を十分に確保しているケースが大半です。


2. 技術的根拠:LL値は“床材単体”ではなく“床全体”で決まる

(1)二重床は「遮音システム」である

二重床の遮音性能は、以下の要素の組み合わせで成立します:

  • スラブ厚(180mm〜220mmなど)
  • 防振ゴム付き支持脚
  • 床下空気層の厚み
  • 床パネル・捨て貼り合板の質量
  • 構造全体の固有振動特性

これらが衝撃エネルギーを吸収・分散し、LL45相当の性能を担保しています。ここに仕上げ材が貢献する割合は極端に小さいのが現実です。

(2)LL45は「床構造の性能」であり、材料の性能ではない

しばしば誤解されていますが、LL45とは「材料の性能」ではなく「床構造全体の性能ランク」です。LL値の測定は、仕上げ材単体ではなく、床全体を一体のシステムとして評価します。

つまり、仕上げ材に“LL45性能を持たせる”という表現自体が技術的には正確ではありません。

(3)直貼りと二重床は別物である

直貼り工法では、仕上げ材の裏面クッション材や厚みによって遮音性能が大きく変わるため、「材料選びが遮音性能を左右する」という考え方が正しい場面があります。

しかし、二重床では全く別の物理が働くため、この直貼りの考え方を二重床にそのまま持ち込むと誤解が生まれます。これが「仕上げ材にもLL45を求めるべきだ」という不適切なルールに繋がっています。


3. それでも管理規約が“LL45床材”を求める理由(制度の矛盾)

(1)管理会社がリスク回避を最優先するから

音のクレームは管理会社にとって最も厄介な相談です。建築音響の知識が乏しい管理会社は、「LL45と書いておけば安心」という理由から、一律でLL45を義務付ける表現を採用しがちです。

(2)理事会も建築の専門家ではない

多くの理事会メンバーは一般居住者であり、床衝撃音の測定方法やスラブ厚の影響を理解していません。そのため、「とりあえず LL45 を求めておけば安全だろう」という曖昧な判断で規約が運用されます。

(3)規約が改正されないまま20年以上残り続ける

最も大きな問題はこれです。マンションの管理規約は、竣工当初に作られた古い知識をベースにしており、その後の建築基準・音響技術の進歩が反映されないまま、20年、30年と使われ続けています。

遮音設計がまったく違う時代の「古い常識」が、現在のマンションにもそのまま適用されているのが現実です。

(4)管理組合は「万が一」だけを恐れている

音に関するトラブルが起きた場合、原因調査・立ち会い・理事会対応は多大な労力が必要です。そのため、管理組合は技術的妥当性よりも「クレーム回避」を優先し、安全側に倒した規約を温存します。


4. リフォーム現場の実態:結局ほとんどの施主はLL45を選ぶ

技術的には不要である場面が多いにも関わらず、現実にはほとんどの施主が「LL45相当の床材」を選びます。

  • 管理規約をスムーズに通したい
  • 管理会社との無用なトラブルを避けたい
  • “LL45”と書いてあるほうが安心感がある

つまり、性能ではなく「制度上の理由」で選ばれているのです。


5. 専門家としての推奨:どう判断すべきか?

(1)技術的事実を理解する

二重床の遮音性能は、床材ではなく床構造が担っています。これは建築音響の基本原則です。

(2)制度と現実の運用も理解する

管理規約がLL45を要求している限り、技術的には不要でも、承認を得るためにはLL45床材を使用する方が総合的に見て合理的です。

(3)“正しい知識を持って選ぶ”ことが最も重要

「本来不要である」
「でも制度上は求められる」
「仕上げ材のLL45は安心材料として使われている」

この3つを理解した上で選択することが、最もストレスの少ないリフォーム計画につながります。


6. まとめ:仕上げ材LL45は“制度の都合で生まれた常識”

二重床の遮音性能は、床材ではなく“床全体の構造”によって決まります。仕上げ材のLL45は本来必要ない場面が多いにも関わらず、管理規約が改正されないまま過去の基準が残り続けたことで、「LL45の床材を使うのが当たり前」という文化が形成されました。

しかし正しい知識を持てば、リフォームで余分な不安や誤解を抱えずに済みます。制度的な要件と技術的な実態を分けて考えることで、施主にとって最適な床材選びができるようになります。

本当に必要なのは「LL45の床材」ではなく、「正しい理解」です。

 

無垢フローリング専門店木魂では、マンション用直貼り無垢フローリングをたくさんラインアップしております。

 

 

木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 東京都江東区新木場1-6-13 木のくに屋ビル4F 公式サイト
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無垢フローリングは高い? 価格相場は? 他の床材との違いは?

投稿日:2025年10月16日

新築やリフォームで「無垢フローリングにしたいが、価格が……」とお悩みの方がいらっしゃるかもしれません。無垢フローリングは天然木ならではの温もりや質感が魅力ですが、合板などを用いた複合フローリングと比較すれば高価になりがちです。
しかし実際には、無垢材の樹種や加工方法などによって、価格には大きな幅があります。施工費用は高めになりやすいものの、耐久性や修繕性の面に優れているため、長く使えば十分なコストパフォーマンスを期待できます。
本記事では、複合フローリング材との比較もしながら、無垢材の価格の実像と魅力をお伝えし、選び方をサポートします。

【目次】

無垢フローリングと複合(合板)の価格を比較すると?
そもそも無垢って何?  無垢材の基礎知識
無垢フローリングならではの魅力・メリットは?
天然の木材ならではの1枚1枚で異なる自然な木目や色合い
手触り、肌触りが心地よく自然な温もりが感じられる
湿度を一定に保つ調湿効果があり室内が快適に
無垢フローリングにデメリットってあるの?
色、艶、木目などの経年変化が起こりやすい
傷や汚れがつきやすく手入れやメンテナンスが必要
伸縮性があるため反りや隙間ができることがある
無垢フローリングの価格相場を決める要素は?
樹の種類:代表的な無垢材の平米単価の目安
オーク(楢)
チーク
バーチ(樺)
パイン
メープル
ヒノキ(桧・檜)
ウォールナット
その他の代表的な無垢材
グレード(等級):木材の節や変色部分が少ないほど高価
規格:幅広で厚みがあり、尺が長いほど高価
仕上げ(塗装):オイル、ウレタンなどの塗料も価格要素
加工・用途・機能性:床暖房対応や防音性能なども価格に影響
無垢フローリングは高いのか? 他の床材と比較すると?
無垢以外の床材(複合フローリング)の特徴と価格相場
挽板(挽き板)フローリング
突板(突き板)フローリング
化粧シートフローリング
無垢フローリングの施工費用は高めになる
無垢フローリングはメンテナンスは必要だが耐用年数は長い
まとめ:総合的に考えると「無垢だから高い」は誤解


無垢フローリングと複合(合板)の価格を比較すると?

「無垢フローリングは高い」というイメージがあるかもしれませんが、実際のところ、複合(合板)フローリングと、どのくらいの価格差があるのでしょうか?

無垢材は樹の種類やグレード(等級)などで価格が大きく異なりますここでは無垢材の中でもポピュラーな杉無垢材を例にとって比較してみましょう。

杉(スギ)は柔らかく肌触りが良いことが特徴で、国内の流通量が多く、住宅用床材として人気があります。無垢材の中では価格は低〜中程度で、平米(㎡)あたりの単価は一般に6,000〜20,000円程度です。

一方、複合フローリングにはいくつか種類があります。表面がプリントシートの「化粧シート」タイプ、薄い天然木を貼った「突板」タイプ、より厚い天然木を貼った「挽板」タイプが代表的です。

以下の表は、6畳(約10㎡)の部屋でそれぞれの床材を全面張り替えした場合の価格を比較したものです。

杉無垢フローリングと複合フローリングの価格比較

 床材  

平米単価

6畳を張り替えた場合(材料費のみ)

杉無垢

6,000〜20,000円程度

約6万〜20万円程度

化粧シート

3,000〜8,000円程度

約3万〜8万円程度

突板

6,000〜12,000円程度

約6万〜12万円程度

挽板

8,000〜15,000円程度

約8万〜15万円程度

※施工の費用は別途

複合フローリングの中で最も安い化粧シートと比較すると、杉無垢の価格は2倍程度になりますが、複合フローリングの中でも高価な挽板と比較すると、じつはそれほど大きく変わりません。


そもそも無垢って何?  無垢材の基礎知識

無垢フローリングの色合い
無垢フローリングの色合い

無垢材とは、天然の木からそのまま切り出した一枚板のことです。その無垢材をフローリング加工を施し、床材として使用するのが、無垢フローリングです。

木の持つ自然な風合いや質感を活かし、長く使うほどに味わいが増していく特徴があります。オーク、チーク、ヒノキなど、さまざまな樹種から選ぶことができ、それぞれが独特の木目や色合いを持っています。
色味も樹種によってナチュラル(明るい茶系)、ダーク(黒・濃い茶褐色系)、白系、赤系など、さまざまなものが選べます。

無垢フローリングならではの魅力・メリットは?  

無垢フローリングの最大の魅力は、天然木材ならではの上質な質感と耐久性です。表面だけ天然木を貼り付けた複合フローリングとは異なり、無垢フローリングは全体が天然木でできているため、傷がついても表面を研磨すれば再生できます。自然な肌触りや、時間が経つにつれて木目や色合いが変化するのも、無垢材ならではの魅力です。

天然の木材ならではの1枚1枚で異なる自然な木目や色合い

無垢フローリングの色合い
無垢フローリングの色合い

無垢フローリングの特徴として、同じ樹種でも1枚1枚が異なる表情を持っていることが挙げられます。木目や節が個性となり、一つとして同じものはなく、空間に自然な温かみを与えてくれます。これは工業製品にはない、天然素材ならではの魅力です。

手触り、肌触りが心地よく自然な温もりが感じられる

無垢フローリングの肌触り

無垢フローリングの肌触り

無垢フローリングは、天然の木の質感をそのまま感じられる点も魅力です。素足で歩いたときに心地よい温もりを感じられるのは、無垢フローリングならではです。

また、樹種によっても異なりますが、木材には一定の断熱効果があります。無垢フローリングだけで十分な断熱効果が得られるわけではないにせよ、肌触りのよさと相まって、室内が快適に感じやすい傾向があります。

湿度を一定に保つ調湿効果があり室内が快適に

無垢材には優れた調湿機能があります。室内の湿度が高いときは空気中の水分を吸収し、乾燥時には水分を放出することで、室内の環境を快適に保ちます。この特性により、カビやダニの発生を抑える効果も期待できます。


無垢フローリングにデメリット
ってあるの?

メリットが多い無垢フローリングですが、注意点もあります。以下にご説明します。

色、艶、木目などの経年変化が起こりやすい

無垢フローリングの経年変化
無垢フローリングの経年変化

無垢フローリングは天然木を使用しているため、年月とともに色や艶、木目が変化しやすい特徴があります。新築当初の鮮やかさや均一さは徐々に薄れ、落ち着いた風合いへと変わっていきます。これは無垢材ならではの味わいでもありますが、当初の見た目を維持したい方にとってはデメリットとなりえます。

傷や汚れがつきやすく手入れやメンテナンスが必要

無垢材の中でもやわらかい樹種は、生活の中で傷や汚れがつきやすい傾向があります。家具の移動や物を落としたことなどが原因で傷が残る場合もあります。定期的な掃除やワックスがけ、オイル塗布といった手入れやメンテナンスを行う必要があります。これらのデメリットを避けるには、硬くて傷がつきにくい樹種を選ぶのも有効です。

伸縮性があるため反りや隙間ができることがある

無垢材は湿度や温度の影響を受けて、若干の伸縮をしています。その結果、反りや膨張、あるいは隙間が生じることがあります。適切な施工を行っても完全には防げない場合があります。ただし、これらは無垢材の自然な特性であり、適切な管理を行えば長い期間にわたって美しい状態を保つことができます。


無垢フローリングの価格相場を決める要素は?

無垢フローリングの価格は、樹種の選択から加工方法、仕上げまで、様々な要素によって大きく変動します。一般的に平米(㎡)あたり10,000円から50,000円程度の価格帯となりますが、選択する材料や仕様によってはさらに高額になることもあります。価格を決める主な要素について、詳しく見ていきましょう。

樹の種類:代表的な無垢材の平米単価の目安

一言に無垢フローリングと言っても、樹種によって価格帯には大きな違いがあります。スギやヒノキなど国産、輸入品のパインなどの針葉樹は比較的手頃なのに対し、ウォールナットやチークなどの広葉樹の輸入材は高価になる傾向があります。

「銘木」と呼ばれるような希少価値の高い樹、国産材でも奈良県産「吉野スギ」や三重県産「尾鷲ヒノキ」などのブランド材は高くなる傾向があります。

以下に代表的な樹種の価格の目安を紹介しましょう。

オーク(楢)

オークは無垢フローリングの定番として人気が高く、1平米あたり9,000円から35,000円程度が一般的な価格帯です。硬いので耐久性が高く、落ち着いた木目が特徴で、多くの住宅で採用されています。


チーク

チークは高級材として知られ、1平米あたり8,000円から65,000円ほどの価格となります。硬くて耐水性に優れ、独特の木目と色合いを持つ高級な材です。


バーチ(樺)

バーチは比較的手頃な価格帯で、1平米あたり6,000円から25,000円程度です。明るい色合いと均一な木目が特徴で、北欧インテリアによく使用されます。


パイン

パインは無垢材の中では安価な選択肢の一つです。1平米あたり5,000円から36,000円程度です。やわらかな材質で傷がつきやすい面がありますが、温かみのある雰囲気を演出できます。


メープル

メープルは中価格帯で、1平米あたり7,000円から30,000円ほどです。明るい色合いが特徴で、硬さもあるので、人気の材です。


ヒノキ(桧・檜)

ヒノキは日本の伝統的な建材で、1平米あたり20,000円から35,000円程度です。防虫・防腐効果があり、独特の香りも魅力です。


ウォールナット

ウォールナットは高級材の代表格で、1平米あたり7,000円から55,000円ほどです。深い色合いと美しい木目が特徴で、高級感のある空間を演出できます。

その他の代表的な無垢材

樹種

価格の目安(㎡あたり)

スギ(杉)

3000円台~

サクラ(桜)

6000円台~

アカシア

6000円台~

クリ(栗)

8000円台~

マホガニー

9,000円台~

カリン

10,000円台~

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グレード(等級):木材の節や変色部分が少ないほど高価

ラスティック調の無垢フローリング
ラスティック調の無垢フローリング

無垢材のグレードは、節や色むら、木目の均一性などによって決まります。一般に高級グレードは節がほとんどなく、木目が均一で美しいため、通常のグレードと比べて1.5倍から2倍ほど高価になります。ただし近年では、あえて節や色むらのあるナチュラルな風合いを活かした「ラスティック」調の無垢材も人気です。

節の入り方には「上小節・小節・生節」など、木目の種類には「板目・柾目」といった専門的な用語が使われ、一般の方には難しいものです。カタログやサンプルを見て、雰囲気を確認されると良いでしょう。

関連記事→無垢材の節についてさらに知りたい方はこちら

規格:幅広で厚みがあり、尺が長いほど高価

無垢材の幅(巾)、厚み、長さなど寸法の規格は価格に大きく影響します。

一般的な幅90mmに対し、120〜150mm以上の幅広のタイプは高価になります。

厚みについては、一般的な15mmに対し、20mm以上の厚い板になると価格が高くなります。反対に、厚みが10mmや12mmと薄い板もあり、合板フローリングからのリフォームやリノベーションによく用いられますが、薄いからといって安いわけではありません。
長さは、一般的には6尺(1820mm)が通常の長さです。これよりも長い長尺材は加工や運搬に手間がかかるため、高価になります。

板の継ぎ方によっても価格は変わります。フローリング材は、複数の板を縦に継いで作る「ユニ加工」や「乱尺」という規格が一般的ですが、縦に継ぎ目のない一枚板で作られた物は「ソリッド材」と呼び、これは高価になります。

仕上げ(塗装):オイル、ウレタンなどの塗料も価格要素

表面仕上げの種類によっても価格は変動します。蜜蝋などを用いた自然塗料のオイル仕上げは、塗料の費用と塗装の手間がかかるため、ウレタン塗装と比べて15%から20%ほど高価になります。ただし、これらの自然塗料は後々のメンテナンス性に優れているため、長期的に見ると経済的な選択となる可能性もあります。木目の年輪を際立たせる「浮造り」などの特殊な処理を施す場合は、さらに価格が高くなります。

加工・用途・機能性:床暖房対応や防音性能なども価格に影響

ヘリンボーン張り無垢フローリング
ヘリンボーン張り無垢フローリング

フローリング材の加工方法や施工方法によっても価格は変わります。

例えば前者では、板を連結するための接合部を短手方向(幅方向)にも設けたエンドマッチ加工が施されていると、より美しい仕上がりになります。一般的に、購入価格は高くなりがちですが、当社の無垢フローリングはエンドマッチ加工が標準です。また、後者の例として、床材をV字になるように並べて貼り付けるヘリンボーン張りがあります。ヘリンボーン張りはおしゃれな印象になる一方、ヘリンボーン専用加工となるため購入価格は高くなりがちで、施工単価は高めになります。

他方、床暖房対応の無垢フローリングは、特殊な乾燥や加工が必要なため、通常品と比べて20~30%ほど価格が上がります。マンション用に防音性能を高めた遮音等級LL45・ΔLL(Ⅰ)-4仕様にした場合も追加費用が発生します。

また、無垢材を羽目板やパネリングのように壁や天井に使うケースもあり、用途は多様です。

これらの加工や処理は初期のコストはかかりますが、快適さや耐久性が増し、長期的に暮らしやすい環境を実現します。

無垢フローリングの選択においては、初期のコストだけでなく、使用年数や維持・管理のしやすさも考慮に入れる必要があります。

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無垢フローリングは高いのか? 他の床材と比較すると?

フローリング床材には、無垢材のほかにもさまざまな物があります。ここでは、他の床材との比較もしながら、無垢フローリングの価格と価値について、詳しく見ていきましょう。

無垢以外の床材(複合フローリング)の特徴と価格相場

フローリングに用いられる床材には、木材を加工して作られた物や、木目を表現した印刷シートを貼った物などがあります。そうした床材を「複合フローリング」や「合板フローリング」と呼びますが、代表的な物を紹介しましょう。

挽板(挽き板)フローリング

挽き板フローリング
挽き板フローリング

挽板フローリングは、合板の表面に2〜4mm程度の天然の木材を張り付けた床材です。無垢材に近い木目と質感を持ちながら、寸法安定性を高くできるのが特徴です。オークやメープル、ウォールナットなどの高級材でも、平米あたり8,000円〜15,000円程度で購入できます。床暖房との相性も良く、施工しやすいのもメリットです。

突板(突き板)フローリング

突板フローリング
突板フローリング

突板は0.2〜0.3mm程度の非常に薄い天然木材の化粧板を合板に張り付けた床材です。挽板よりもさらに安く、平米あたり6,000円〜12,000円程度が一般的です。木目は自然な仕上がりで収縮や反り・割れのリスクも少ないですが、傷がついた際の補修は難しく、張り替えが必要になることもあります。

化粧シートフローリング

化粧シートフローリングは、木目を印刷したシートを基材に張り付けた最も安価な床材です。近年は印刷技術が良くなり、見た目は本物の木材のように見えますが、やはり天然木特有の質感とは異なります。価格は平米あたり3,000円〜8,000円程度です。
関連記事→見た目は同じ?突き板と挽き板と無垢板フローリングの違い|耐久性・質感・選び方

無垢フローリングの施工費用は高めになる

無垢フローリングの施工には、木の収縮を抑えるなどの専門的な知識と技術が必要です。そのため、施工費用は他の床材と比べて高めになります。突板や挽板などの複合フローリングの施工費用は平米当たり3,000〜5,000円程度ですが、無垢フローリングの場合は5,000〜8,000円程度が一般的です。

無垢フローリングはメンテナンスは必要だが耐用年数は長い

無垢フローリングは適切なメンテナンスを行えば、30年以上使用できます。表面の傷は研磨して塗装し直せば、新品同様になります。オイルや蜜蝋ワックスでの定期的なメンテナンスは必要ですが、経年変化によって味わいが増すのも魅力です。長期的に見れば、張り替えの必要が少ないため、総コストは他の床材と比べても高くない場合もあります。

このように、無垢フローリングは初期のコストは高めですが、長期的に見ると、その価値は十分にあると言えるでしょう。自然素材ならではの風合いと耐久性を重視する方には、おすすめの選択肢となります。

まとめ:総合的に考えると「無垢だから高い」は誤解

無垢フローリングは、初期費用だけを見ると他の床材より高額に感じるかもしれません。しかし、樹種や規格、加工の方法などの選び方によってコストを抑えることも可能です。また、耐久性や修繕のしやすさには大きなメリットがあり、長期的に見ると、必ずしも一概に「高い」とは言えません。
無垢フローリングの特徴である天然の木材ならではの木目の美しさや質感は、年月とともに味わいを増していきます。これは他の床材にはない魅力です。経年変化がむしろ価値を高める要素となるのです。
突板や合板とは異なり、傷がついても、表面を研磨して塗装し直すことで新品同様の状態に戻せる特徴があります。オイルや蜜蝋
ワックスでの表面の処理もDIYでできることが多いため、メンテナンス費用を抑えられます。修繕しやすいのは、長期的なコストを抑えることにもなります。

肌触りが良いことや天然の木ならではの調湿効果など、住居の環境を改善する点にも注目です。

さまざまな魅力やメリットのある無垢フローリングは、家づくりにおいて、おすすめできる選択肢の一つです。施工時のコスト以上の満足感を得られる可能性も高いと言えるでしょう。

木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 東京都江東区新木場1-6-13 木のくに屋ビル4F 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/

マンションのLL45直貼りフローリングに「上貼り」は不可─性能が落ちる理由と正しい改修手順

投稿日:2025年09月30日

マンションのLL45直貼りフローリングに「上貼り」は絶対不可──遮音性能が落ちる理由と正しい改修手順

【この記事は、マンションのリフォーム実務者、管理組合、そしてLL45フローリングの改修を検討されている住人の方々に向けて、正確な知識を提供します。】

マンションの床リフォームにおいて、「既存の床に新しいフローリングを重ねて貼る(上貼り)」は、工期短縮やコスト削減の魅力的な手法として提案されることがあります。

しかし、既存の床がLL45等級の「直貼り遮音フローリング」である場合、この「上貼り」工法は絶対に避けるべき工法です。

本記事では、「なぜ上貼りが不可なのか」を技術的なメカニズムから詳細に解説し、管理規約を遵守しながら安全にリフォームを成功させるための「正しい改修手順」を解説します。


1. なぜ「LL45直貼りフローリングの上貼り」は遮音性能を低下させるのか?(技術的解説)

結論から言います。LL45の直貼りフローリングの上に別の床材を上貼りすると、遮音性能が維持できないどころか、むしろLL50やLL55レベルに悪化することがほとんどです。

これは、LL45直貼りフローリングが持つ特殊な遮音メカニズムを理解せずに、安易に質量を増やしてしまうために起こります。

1-1. LL45フローリングの遮音メカニズムの基礎

LL45等級の直貼りフローリングは、以下の3層構造によって、階下への「軽量床衝撃音(スプーンを落とした音など)」を効果的に吸収・緩和しています。

  • 表面材(フローリング本体)
  • 緩衝材(裏材): 衝撃を吸収し、振動を遮断する最も重要な部分
  • コンクリートスラブ(下地)

この構造は、緩衝材の反発力と厚みが、表面材の質量と緻密に計算され、最適な振動吸収を実現しています。

1-2. 上貼りが引き起こす「遮音性能低下」の構造的理由

上貼りは、このデリケートなバランスを崩壊させ、以下の深刻な問題を引き起こします。

  • 原因①:緩衝材の機能不全(加重による潰れ)
    新しいフローリング材の重さが加わることで、既存の緩衝材が想定以上に圧縮され、反発力や振動吸収能力が失われます。
  • 原因②:共振現象と太鼓現象の発生
    上貼りした新しい床材と、既存のフローリング、そしてコンクリートスラブの間で、新たな空間と質量が形成されます。これにより、特定の周波数で床全体が共振したり、振動を増幅させたりする現象が発生します。

【専門的なエビデンス】
一般財団法人 建築研究振興協会(GBRC)などの専門機関の実験では、遮音フローリングに上貼りした場合、人の足音に含まれやすい250Hz帯域で18dBもの大幅な遮音性能の低下が確認されています。これは性能がLL45からLL50以上に悪化することを明確に示す、構造的なリスクの根拠です。


2. 実務者が注意すべき「管理規約」と「トラブル」のリスク

遮音性能の低下は、単なる技術的な問題では済みません。マンションリフォームの実務においては、法的・契約上のリスクに直結します。

2-1. 「上貼り」は管理組合に承認されない工事である

ほとんどのマンションの管理規約には、「床の遮音性能は、既存の等級(LL45など)を維持または向上させること」が義務付けられています。

上貼りは性能を悪化させるリスクが非常に高いため、たとえリフォーム業者が推奨したとしても、管理組合に承認されない工事となります。無断で施工した場合、規約違反として原状回復を求められる可能性があります。

2-2. 階下住民からのクレームと訴訟リスク

遮音性能が悪化すると、当然ながら階下住民からの騒音クレームが発生します。

  • リフォーム後の性能調査でLL45を満たしていないことが判明した場合、リフォーム業者や住人が損害賠償原状回復(撤去張替え)の費用を負担するリスクが生じます。
  • 安易な上貼りは、コスト削減どころか、大規模な追加費用人間関係の崩壊を招く、極めて危険な行為です。

2-3. 【誤解】遮音性能付きの上貼り用フローリングを使っても良いのか?

「上貼り専用の遮音フローリング」でも、既存の緩衝材との二重構造が、かえって共振を引き起こすため推奨できません。(メーカー保証外となる可能性にも言及)


3. 【正しい改修手順】LL45直貼りフローリングは「撤去張替え」一択

LL45の遮音性能を確実に維持し、トラブルを回避するための唯一の正しい改修方法は、既存の床材を完全に撤去し、新しいLL45適合製品に張り替えることです。

3-1. ステップ①:既存の直貼りフローリングを完全に撤去する

既存の直貼り材は接着剤で強固に固定されているため、撤去作業には専門的な技術と手間が必要です。

  • 作業内容: 既存のフローリングと緩衝材を剥がし、コンクリートスラブ(下地)に残った接着剤をサンディングなどで完全に除去します。
  • 重要なポイント: 下地処理を丁寧に行うことが、新しい床材の遮音性能を保証する上で最も重要です。

3-2. ステップ②:新しいLL45適合製品を直貼りする

管理規約で定められた遮音等級(LL45など)を満たす新しい床材を選定し、適切な直貼り用接着剤で施工します。

  • 製品選定の基準:
    • 管理組合の承認を得たLL45等級適合の製品証明書(試験データ)があること。
    • マンションリフォームに特化した接着剤を使用すること。

4. 【無垢フローリング木魂の提案】 LL45対応の「撤去張替え」で実現する快適性

正しい「撤去張替え」を選ぶことで、遮音性能の維持だけでなく、住環境を劇的に改善する機会を得られます。

当社(無垢フローリング木魂)では、マンションの厳しい管理規約をクリアしながら、無垢材ならではの快適性を提供するLL45適合の製品を取り扱っています。

特徴 無垢フローリング木魂のLL45製品 上貼りの問題点
遮音性能 LL45適合証明書付きで安心 性能低下、規約違反のリスク大
耐久性 撤去により下地から新築同様に再生 既存の床の寿命に引きずられる
快適性 調湿性・温かみ・経年美化 機能性が付加されず、見た目のみの変化

【選ばれている理由】

無垢フローリング木魂のLL45対応製品は、無垢材の美しい表情を保ちながら、裏側に特殊な高性能緩衝材を複合しており、撤去後の正しい張替えにおいて、多くのマンションリフォームで採用されています。


5. 良くある質問(Q&A)

Q1: 「上貼り専用の遮音フローリング」を使えば、LL45の性能は維持できるのではないでしょうか?

A1: 維持できない可能性が極めて高いです。 上貼り専用品であっても、既存の直貼りフローリングの緩衝材(スポンジ)の機能が、新しい床材の重さで不均一に変化したり、潰れたりします。この「二重の緩衝層」が予期せぬ共振現象を引き起こし、メーカーの想定外の音(特に低音域)が発生するリスクがあります。

Q2: 上貼りによって、遮音性能がLL45からLL50などに悪化するとは、具体的にどういうことですか?

A2: 階下への騒音レベルが大きくなることを意味します。 LL45やLL50という数値は、床衝撃音の遮音等級を示しており、数字が小さいほど遮音性能が高い(静かである)ことを示します。LL45の床材に上貼りすることで性能がLL50に悪化するということは、階下へ伝わる音が大きくなり、騒音トラブル発生リスクが高まるということです。

Q3: どうしても撤去が難しいのですが、他に打つ手はありませんか?

A3: 根本的な解決にはなりませんが、「置き敷き」の遮音カーペットやマットを検討する方法があります。 上貼りが「接着剤などで既存床に固定する」のに対し、置き敷きは床に固定せず敷くだけです。この方法であれば、既存床の性能を悪化させる構造的リスクは低減されます。ただし、置き敷き材のLL等級が管理規約を満たすか、また階下への音を完全に防げるかは、既存床とマットの性能に大きく依存します。

Q4: 撤去して張り替える場合、無垢フローリングはLL45に対応していますか?

A4: はい、適切な製品を選べば対応可能です。 一般的に無垢フローリングは遮音性能の確保が難しいとされますが、現在は裏側に特殊な緩衝材を複合した「LL45適合の直貼り用無垢フローリング」が開発・販売されています。撤去張替えを行うことで、遮音基準を満たしつつ、無垢材ならではの快適性やデザイン性を実現できます。


【まとめ】

マンションのLL45直貼り遮音フローリングの改修において、「上貼り」工法は遮音性能を確実に低下させます。目先のコストと工期と引き換えに、規約違反や騒音トラブルという大きなリスクを背負うことになります。

長期的な安心と快適な住環境を実現するためには、「既存材の完全撤去とLL45適合製品への張り替え」という正しい手順を選んでください。

🔑 LL45フローリングの撤去・張替えに関するご相談はこちら

当社では、管理組合の基準を満たすLL45適合の無垢フローリングを多数取り揃えております。管理規約の確認、製品の無料サンプル請求、お見積もりについては、以下の窓口へ今すぐご相談ください。

木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 東京都江東区新木場1-6-13 木のくに屋ビル4F 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/