剣道場床などのウレタン塗装剥がしに潜む危険性と注意点・その2

剣道の足運びの基本は擦り足だと言われています。

剣道場床に施されたウレタン塗装が原因で
擦り足の稽古ができないと嘆く先生方も多いと聞きます。

ウレタン塗装は、そもそもシューズの滑り止めの役割もあるので
素足+擦り足で稽古をする剣道には不向きだと言われています。

そこで剣道場床のウレタン塗装を剥がして
無塗装の状態で稽古をしよう!とお考えになる方が多いのですが
そこには様々な危険が待ち受けているという事を知ってください。

以前もブログで紹介しました。
現状のウレタン塗装を剥がして、
無塗装またはオイル塗装に変更する際にフローリング・床材潜む危険性。
こちらが”その①”で今回は”その②”という事になります。

今回の『剣道場床のウレタン塗装剥がしに潜む危険・その②』も
実際に遭遇した現場で気が付いたところです。

剣道場床の問題でよく耳にするのは「割れ」「ササクレ」です。
すぐ想像できますが、割れてササクレが出て足裏に刺さって怪我する。
この度も、こんなパターンかなと思い言ってきましたが違ってました。

画像1をご覧ください。
本来、床材に埋まっているはずの栓が飛び出しています。
この飛び出した栓に足指をひっかけて爪が剥がれたりするそうです。
これは危険です。
では、どうしてこのような事になっているのでしょうか?

画像1

この栓を抜いてみました。画像2をご覧ください。
そこに頭をヒョッコリ出したのは、なんと釘です。
最近では、ビスが必須ですが、
時代によっては釘でフローリングを施工されているのです。

画像2

こちらの道場では、ウレタン塗装を剥がした事はないそうですが、
十年以上もウレタン再塗装無しで使用されてきたそうです。
近年、栓の蓋の役目でもあったウレタン塗装がほぼ無くなり
緩んだ釘に押し上げられ、栓がヒョッコリと頭を出してきたようです。

ヒョッコリ頭がいたるところに点在しています。
ウレタン塗装劣化により滑りは良くなって来たそうなので
再度ウレタン塗装で栓に蓋をする気にはなかなかなれません。

剣道では、踏み込み時に剣士の体重の10倍近くの力が
床に加わると言われています。
そのため剣道場床ではバネやゴムを使用して
床面を軟らかくすることがほとんどです。
要するにたわみが大きいという事になります。
そうすると、床板はもちろん大引、釘やビス、栓など色々な部材に
通常の体育館では考えられないくらいの力が加わっています。

そもそも他の競技で剣道ほど床を
ドスンドスンする事はなかなか無いでしょう。
通常の体育館の床と同じだと思って計画すると
とんでもないことになります。

 

今回気が付いた点
・ウレタン塗装は、汚れ防止の他にもそれなりの役割がある。
・釘では無く専用ビスを使う。
・栓にもボンドを使用する。
・床材も剣道場床専用のものを使用する

 

もちろん全ての剣道場床が研磨できない訳では無いのですが、
おおよそ研磨ができる剣道場床は設計段階から
研磨の計画が盛り込んで計画されていることがほとんどです。

剣道場床の研磨が可能かどうかは、
作業前にしっかり確認する事にしてください。

ちなみに私たち業者にとって、床研磨はいわゆるいい仕事です。
研磨ができるかどうかとなると、ほぼほぼ”できる”との
回答になるかと思いますが、その後の事はあまり考慮されません。

簡単に”研磨してオイル塗装して完了!”とはいきませんので
本当に慎重に検討してください。

 

 

剣道場床のウレタン塗装剥がしに潜む危険

 

 

木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/

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