木材関連用語集3

81 .住宅性能評価・表示制度
消費者が自由な住宅市場において望ましい住宅を適正な価格で確保できるよう、予算に応じて、住宅の性能を通性に評価できるよう、その情報を明快に表示してゆく。また住宅を供給する側にとっても、自己責任原則の明確化と連動することにより自主管理能力の向上が求められる一方で、規制緩和による技術開発活動などができる範囲を拡大する。
これらの考え方を普及させてゆくために住宅の主要な性能項目についての評価基準を作成しその基準に基づき評価を受けた住宅事業者が消費者にわかりやすい表現で性能を表示する制度を創設している。
表示の具体的な項目は、① 耐久性(構造躯体の物理的耐久性、社会的耐久性、保証・維持管理体制など)② 居住性(遮音性、気密性、省エネルギー性など)③ 安全性(防耐火性、構造耐力性、長寿社会対応性)などが挙げられる。
82 . 住宅設備費
住宅設備の主なものには、給排水衛生設備、給湯設備、ガス設備、電気設備、空調設備等がある。
バスユニット、システムキッチン、洗面化粧台等の箱物類は設備機器として区別して取扱うこともある。
住宅は、建物仕様のグレード、間取りも様々 で、同じ床面積でも建築費に違いを生ずる。このなかでも、設備費に係わる費用は極めて個別性が強いが、平均的な住宅で見込む基本的な給排水衛生設備費、電気設備費等は12 ~15 %とみられる。
これに、標準的な、厨房機器、洗面設備等の箱物等を含めると15 ~18 %程度になろう。
更に、空調設備、ガス工事、バスユニット、システムキッチン、照明器具、汚水浄化槽を加算すると工事費に占める比率が更に高くなる。
住宅設備費は、今後の高齢化社会に対応したホームエレベーターの設置、家事軽減のための設備や住宅メーカーが他社との差別化等を積極的に図ることもあり、増加して推移するものとみられている。
83 . 準耐力壁等
性能表示項目のなかの「構造の安定に関すること」 では、等級1 と、等級2 以上ではチェックの種類内容が異なる。その中で等級2 以上において、基準として、上下に横架材や枠材のない面材や垂れ壁・腰壁も存在壁量として評価出来ることになった。これが準耐力壁である。
準耐力壁等には、準耐力壁と腰壁等(腰壁と垂れ壁)の2 種類があり、その条件として、
( 1 )以下の材料が使われていること。
①木ずり等を打った壁、②JAS 構造用合板、③構造用パネル、④ パーティクルボード、⑤ 石膏ボード(室内側及び室内壁)とあわせて
( 2 )横架材間の上から下までに前項の材料が貼られてなくてもよいが、① 少なくとも柱・間柱・縦枠材に釘うちされていること。② 直接軸組に打ち付けられていることの条件が必要である。
84 .真壁 大壁
真壁造りは、大ざっぱにいえば多く日本間に見られるもので、柱と柱の間に壁をとりつけた形のものであり、柱が壁の外にあらわれている。したがってこの場合の柱角は構造材であるとともに化粧材である。
これに対比して大壁は、一般的には洋間で柱が壁の外に出ていない 。
林業において“商品生産林業”といって枝打ちが盛んになってきたひとつのねらいは、真壁向きの化粧と強度の両面の役割を果す無節の柱角をとることである。
しかし問題なのは木造住宅においても、大壁の部屋がふえてきていること、また真壁向きの柱角といっても集成材が広まってきていることだ。
もちろん枝打ちが盛んになってきたといっても作業のコスト面で限界があり全体からすると少量であり、ムクの無節の柱は希少価値材として位置づけられよう。
85 . 芯去り材
もともと芯材とは赤身ともいわれ、樹木の髄の周辺部であり、一般的に濃い色の部分である。
芯去り材とは、製材品のうち、そうした芯材・樹芯部を取り除いた挽き角、平角などである。言いかえれば辺材に近いところから採る。したがって芯去り材・芯去り角を挽くには、どちらかといえば優良な太い原木が必要であり、それだけに芯持ち材・芯持ち角より価格的に高いのが普通である。
柱角の場合、関東・中部地域などでは大体が芯持ち柱を用いるが、九州地方などでは無節に近い芯去り柱を愛用する傾向がある。しかし最近は住宅工法が変化、柱の見える日本間が減少、かわって柱が壁のうしろにかくれる洋間へ傾斜しているので、こうした化粧性を備えている芯去り柱は、ひと頃よりは珍重されなくなりつつある。芯去り柱にかわって洋間向きの並柱がふえてきている。
86 .新世代住宅
建設省が平成3 年度にスタートさせたもので、在来木造軸組住宅の合理化・普及がねらいであった。
住宅メーカーなどが提案・応募。このなかから① ソフト面(たとえば住宅の設計)、② ハード面(たとえば住宅資材のパネル化、ユニット化)で「新世紀にふさわしい合理的な住宅」と認められたところが、13 社入選した。
入選した住宅メーカーが、その住宅システムを一般の大工・工務店に広く開放、在来木造住宅の合理化を促進させようというものだ。入選した住宅メーカーは、希望する大工・工務店に、(一定のマージンを取って)営業支援したり、合理化部材を販売することが可能となる。
87 . スクリブナー
スクリブナー(Scribner Scale )は、米西岸の丸太検量方法で、1 BM ( 1 Board Measure =約0.0024㎥ )の製材がとれる丸太材積が1 スクリブナー(約0.005 ㎥)とされている。そして現地では、丸太は一般に1 , 000 スクリブナー(約5 ㎥)単位で価格交渉される。米西岸で、たとえば米材丸太価格が500 ドルとされ、1 ドル=125 円とした場合の㎥当り日本円価格は次のようになる。
〈計算例〉
500 ドル×125 円=62 , 500 円(千スクリブナー当り)
62 , 500 円÷5 ㎥=12 , 500 円(㎥当り)
88 .スクリブナー(scribner )とボードメジャー(Board Measure )
ともに北米で使用される度量単位。1 ボードメジャーの製材品を生産するために必要な丸太材積を1 スクリブナーという。
1 ボードメジャーは0.00236㎥で、厚1 インチ× 幅12 インチ× 長1 フィートの製材品材積に相当する。正式な計算式は
厚(インチ単位)× 幅(インチ単位)× 長(フィート単位)÷12
で与えられ、例えばツーバイフォー、長さ6 フィートの製材品の材積は、4 ボードメジャーである。ボードメジャーはBM と略され、またボードフィート(BF )とも称される。
ただしスクリブナーもBF とも称されるので注意が必要。スクリブナーの㎥への換算値は、冒頭に述べたような性格の単位であるので、樹種や径級によって異なる。例えば米国西部産針葉樹丸太の場合、1 , 000 スクリブナー当たりの㎥材積は、末口12 インチの場合6.0㎥。20 インチの場合は4.4㎥、28 インチの場合は3.9㎥ が目安となる。
89 . スティール住宅
スティール住宅が浮上している。アメリカでは1996年現在、住宅着工総戸数147 万戸のうちのほぼ4 %に当る5 万5 , 000 戸がスティール構造になったという。とくにカリフォルニアといった西部では15 %を占めているそうだが、アメリカ鉄鋼協会はなお強気で「耐震性が大きく、ハリケーンへの耐久力もある。2000 年までに全米住宅着工戸数の25 %に達するだろう」と述べている。
そして日本の大手鉄鋼会社もこのスティール住宅に本格的に取り組む姿勢だ。スティール住宅は厚さ1 ㎜前後の薄い鋼材をコの字型などに加工して枠組み材に使うツーバイフォー形式。96年度の建築戸数は大手5 社合計で10 戸程度だったが、97 年度の建築計画戸数は川崎製鉄、住友金属工業、神戸製鋼所、NKK などでざっと100 戸ほどで96 年度に対比し10 倍ほどだった。価格は坪当り約50 万円からでプレハブ住宅並みだが将来は40 万円台にまで下げたい意向。
90 . スーパーウッド
木材の細胞の中にセラミックを形成する(複合化)ことなどによって木材の燃える、狂う、腐るなどの特性を改善した新しい木材のこと。
林野庁の助成で、民間企業の集りである木材性能向上技術研究組合が発足、技術開発を急いでいるが、実用化が進めば建築基準法により難燃材使用が義務づけられている劇場・病院・ホテル・百貨店などの内装(壁・天井)に木材の使用が可能となる。また家具、屋外遊具などに向けても新しい用途の開発が見込まれる。
工業化製品である「エンジニアリングウッド」に属するものであり、「今後の木材需要拡大のキーポイントだ」と期待が大きい。
91 . 性能規定
建築物が有すべき単体に関する基準を建築物に要求される性能項目、性能水準及びその検証方法(計算方法・試験方法)を規定し、建築物の安全性等の項目を明記すること。
現行の建築基準法は材料、工法、寸法等を具体的に規定する仕様規定が中心となっている。そのため、確保すべき性能水準が必ずしも明確でなく、固定化した仕様が自由な選択を妨げるという問題を有している。
法の第一目的は国民の生命健康及び財産を守ることであるが、その目的を達成する上での性能的に規定する項目としては、構造安全性、火災に対する安全性、避難時の安全性、環境・衛生上の安全性などが挙げられる。
また法で規定される性能を検証・確認する方法として、①標準的な検証方法を定める、②標準的な検証方法以外の特別な方法を定める、③ 標準的な適合みなし仕様に依る、④ 企業・団体の作成する適合みなし仕様が挙げられる。
92 . セーフガード
GATT 第19 条に定められている措置で、輸入急増により重大な損害を受けている輸入国の産業を救済し、当該産業の構造調整を行うことを旨とした輸入に対する一時的な緊急措置。発動にあたっては、利害関係国との協議、関税引き上げ等に関する利害関係国への保証措置等の努力義務が課せられる。また一定の条件のことで、輸出国は輸入国からの輸出貨物に対し、関税引き上げ等の対抗措置をとることができる。セーフガードは、日本では関税定率法第9 条緊急関税等として定められている。緊急関税とは、① 外国における価格の低落その他予想されなかった事情の変化による特定の種類の貨物の輸入の増加の事実があり、② 当該貨物の輸入が、これと同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する本邦の産業に重大な損害を与え、また与えるおそれがある事実、③ 国民経済上緊急に必要があると認められる時に実施できる関税措置を指す。
93 .セラミックウッド
戦後、木材需給のひっ迫を引き金にアルミなどのいわゆる代替材が進出、木材と置きかえられた。しかし再び木材が見直されているが、性能重視が強まっている。
このため化学的に木材へ難燃性や防腐性を与える技術が進んでいるが、セラミックウッドもそのひとつ。
セラミックウッドをつくるには、木材を構成する細胞の中に、後で水に溶けなくなるような方法で、塩化バリウム、リン酸水素アンモニウムといった無機化合物の溶液を浸み込ませる。
セラミックウッドは燃えないだけでなく、白アリにも強く、人畜無害でその効果も長い。木材新時代の素材だ。
94 . ゼロエミッション
エミッションは放射物のこと。最近は環境問題で、燃料消費や生産物製造の過程で汚染物質の排出されることが問題視されている。そして林業地・製材加工地においてもゼロエミッション(zero emission )構想、つまり「地域で使うエネルギーや資源は地域で賄い、地域で排出する廃棄物は地域で処理する」ことが強調されている。
一般に製材などの残廃材は、① チップは紙パルプ用、パーティクルボード用、MDF (中質繊維板)用に、② バーク(樹皮)は堆肥用に、③ ノコ屑は畜舎向け敷料・堆肥用また、きのこ栽培用に、④ 広くは乾燥、電力の熱エネルギー源として活用されているものの、今後はなおこうした残廃材の有効活用が資源を無駄なく活かすこと、残廃材を“商品” にすることからも課題であろう。地域によっては残廃材での規模の大きな電力施設の設置といった構想も出ている。
95 . 背割り
木材は乾燥と並行して収縮する。とりわけ、切断面における収縮の異方性(半径方向は接線方向の約1 / 2 など方向によって異なる性質)によって、未乾燥材(丸太)から柱、板、梁等の部材を製材して乾燥すると、木取りの仕方により異なった断面形状の変化(収縮の違いが応力の差となって現れ、この応力をバランスよくする特性のため材断面が歪む)を生ずる。
このような木材の特質から、芯持ち柱等(木口面に芯を有するもの)では、収縮の異方性による外辺から芯に向かった放射線状の割れが一般的なものとして発生する。この状況を無くし外見的にも商品価値を維持するめには、あらかじめ、材一面の中心線から材の芯まで達する直線上の鋸目を入れておくことが重要になる。背割りはこの直線上の鋸目のことで、大径材等では必要により樫(くさび)を入れる。
一方で、近年の木材乾燥に係わる技術の発達で、背割りなし柱等人工乾燥材が生産されていることにも留意する必要があろう。
96. 相対取引とセリ売り
相対取引とは売主と買主とが話し合いの相対で売買する取引。一般の問屋とか木材センターではこの相対取引である。国有林の販売方法の一つである「競争によらず当事者の合意によって売買契約する」随意契約と同じだともいえる。
この相対取引に対して、多数の買手が集り競い合って材を購入する一つの手段としてセリ売がある。市売には原木市売と製品市売とがあり、原木の場合は入札が多く、製品の場合はセリ売りが多い。セリ売りは、多数の買手が集り発声ごとに値段を高値へとセリ上げ、最後の高値のものが買手となる。反対の場合はセリ下げである。
97 . ソリッド材
ソリッド(solid )は、もともと固体の、密度の高い、硬質な、がっちりした、中まで充実しているさま、などを意味している。またソリッド・ステート(solid state ) というと電子工学においては、真空管のような気体状態内での電子の動きを利用するものに対して、半導体など固定状態内での電子の動きを利用した電子部品で組み立てられていることを表す、という。それに人の場合は真面目な、堅実な、堅い、などの意味に使われる。
そして木材の場合、ソリッド材というと、これまで普通、一般的には無垢材を指していた。もっともアメリカなどでは集成材についてもソリッド材と言うことがある。
ということはソリッド材とは、要は、たとえば家具材にしろ張りのもので中が太鼓になっている材ではなく、一枚板の材であるといった広い意味を指していよう。
98 . 台形集成材
集成材はエンジニアリングウッド(木質工業資材)を代表する材だといえるが、一般集成材とは別に台形集成材がある。台形集成材は曲がりの多い小径木を歩留まりよく集成する目的で開発されたもので、曲がりの影響がない程度の長さ(65cm くらい)に玉切りした小丸太を半割にして台形(梯形)に加工し、木表と木裏を交互に合わせ広幅板にし、さらにこれをブロックする。長大ブロックに集成された製品は、用途により任意の寸法に製材・仕上げられる。用途は建築物の壁板、腰板、フローリング、出窓枠、棚板、家具、カウンター、日曜大工用材、また敷居、鴨居などの芯材などで、幅広く使用される。
原料はヒノキ、スギ、マツなどで間伐促進をねらいに岩手・九戸村森林組合、徳島・木頭杉集成材加工協組など全国に10 社の工場が量産していたが、減少している。
99 . 耐力壁(たいりょくへき)
阪神大震災を契機に“耐力壁”が一段とクローズアップされている。耐力壁は構造体の壁の中で鉛直(水平面に対する直角)および水平荷重を負担させるための壁のことで、間仕切り壁とは区分され、ベアリングウォール(往復運動する軸を支える壁)ともいう。筋違いや壁が耐震性を高める上で重要であることは古くから経験的に指摘されていたが、壁量計算による耐震設計の方法が確立したのは建築基準法が成立した戦後のことである。
在来軸組構法と枠組壁工法における耐力壁の仕様と倍率は建築基準法施行令の中で定められている。耐力壁の種類は基準法設立当時は筋違いや土塗壁などだったが、いまでは合板やパーティクルボードなどの各種の面材も用いられるようになっている。
倍率は「耐力壁の水平方向の長さlm 当たり一定の抵抗力」を指していう。軸組構法と枠組壁工法との倍率は仕様が異なるため同じではない。
100 . ヤング係数測定 打撃音法
このところ建築材性能化時代を背景に、たとえば曲げヤング係数値(ヤング率。木材の曲がりにくさを示す数値で、数値の大きいものの方が曲がりにくい)への認識が高まってきている。
そして打撃音法によってヤング係数を求める方法が普及しつつある。打撃音法は木材の木口面をハンマーなどでたたいた時に発生する音の特性を、機器を用いて分析してヤング係数を求める方法である。
打撃音怯によるメリットは、① 強度試験機を持っていない場合、少ない投資でヤング係数の測定ができる⑧ 丸太などの変形断面の材料の測定ができる③ 手軽にすばやい測定ができること、などである。
集成材などの普及で木材にも品質保証、ヤング係数による等級区分が求められるようになってきた。
なお鉄鋼メー力一でも強度表示の高まりから原木自動測定システムの開発を進めている。
101 .たてつぎ材 幅はぎ材
木材工業用原料は原木丸太が小径だと品質が低下、そして節、割れなどの欠点を除こうとすると短尺化してしまう。このため長尺材や幅広材をとるためのひとつの手法として集成材生産などが盛んだが、これらの場合「たてつぎ」や「幅はぎ」の工法がある。「たてつぎ」の工法では無欠点の短尺材や端材などをたてつぎして一定の強度性能を持った定尺材や長尺材を生産する。一方「横はぎ」の工法は板幅を広くするために幅方向に寄せ合わせるものであり、はぐは「はぎ合わせる」、「つぎはぎ」のはぐであって縦方向につぐのとは区分している。
幅はぎの手法は、① 接着する方法、② つぎ手で組み合わせる方法、③ くぎ、ねじなどで組み合わせる方法に大別される。なお、一般に接着による幅はぎは柾・板目面の接着だから木材の横方向の強さに対して十分な接着性能が得られるとされている。
102 . WWPA ・COFI
WWPA は米国西部木材製品協会。米国のワシントン州など西部12 州の製材業者約600 工場で組織された米国最大の木材関連団体であって、① 品質規格検査、③ 市場開発調査・開発、③ 販売促進などの活動を行っている。今後はとくに集成材とかLVL とかいったいわゆるエンジニアリングウッド(木質工業資材)のたぐいの対日普及に力を入れよう。
一方、COFI (コフィー)は力ナダ・ブリティッシュ・コロンビア州林産業審議会であってカナダBC州の製材合板生産者の集まりである。やはりカナダ材製品の普及、輸出振興などに活動しており、とくに日本では2 × 4 (ツーバイフォー)工法住宅の普及運動で知られている。
WWPA 、COFI とも日本に事務所を置いている。
103 .断熱材
室内暖房時の室内からの熱の流失、また冷房時の室外からの熱の流入は、室内周囲の壁、開口部等より生ずる。断熱材は、この流失、流入を防ぐために壁、屋根、天井等に用いられ、例えば、壁の間柱間に施工時は、下のほうから足などで押さえつけながらはめ込む方式となる。
天然系の断熱材として主なものは、セルロースファィバー(主原料は新聞古紙のリサイクル材等)、炭化コルク、羊毛など。また化学製品として高発泡ポリエチレン系断熱材、鉄鋼スラグを原料とした断熱材等がある。
いずれの断熱材も熱エネルギーの移動速度を示す熱伝導率(λ)が低いと言う性質を利用したものであるが、建物の結露や結露によるカビの発生を防ぎ、建物全体を密閉することなく快適な状況に保つことがポイントとなる。
なお、木材細胞は熱を伝えにくい空気を含むことから、とりわけ比重の軽いキリ等木材は、断熱材と同様の用途に使用することができる。
104 . チェック・プライス(check price )
パプアニューギニアなど南洋材産地国が法律で定めているミニマム・エキスポート・プライス(最低輸出価格)のこと。抑制価格ともいわれている。
過当競争による出血赤字で、自国経済に損失を招くのを防ごうといったねらいもある。
資源の枯渇を背景に、南洋材輸出国においては、こうしたチェック・プライス制度が強化されてきた。
105 .定期借地権
平成4 年に成立した新しい「借地借家法」で、一定期間(50 年)後、土地所有者に確実にその所有地が戻ってくる「定期借地権」が認められた。
旧借地法、あるいは新法でも通常の借地(普通借地権)ではよほどの理由がない限り地主側が借地契約の更新を拒否することができない。つまり「一度貸す土地は二度と返ってこない」といわれている“借地”だが、定期借地権だと、土地所有者にとっては、50 年間土地を貸して地代を受け取り、50 年後には更地で返してもらえるというもので、新しい土地活用の途が開かれたかたちである。地主にとっては① 安定した土地収入が得られる、② 土地が必ず返ってくる、一方家主にとっては① 高い土地購入代が不要、② 自分の建てたい一戸建ての家を建てられるというメリットがあるとされており、ハウスメーカーなどが新設住宅の需要掘り起しをねらって取り組み出している。
106 . DC ボード
DC ボードは「幅はぎ板」の一種で、幅はぎ板のことをDC ボードと呼んでいるところがある。D はdowel でダボとか合わせ釘のこと。C はconnect で接合。つまりダボで幅広方向に寄せ合わせ、板幅を広くした材、幅はぎ板である。
なお幅方向につけることをはぐといい、このはぐは「はぎ合わせる」「つぎはぎ」などのことを指す。そしてこのはぐが「幅はぎ板」になった。
幅はぎ板は、小径木からたとえば縦1.8m 、幅9cm の小幅板をとり、これを5 枚横に合わせると縦はそのまま1.8m 、幅45cm の幅広の板になり、屋根瓦の下の野地板とか床下地材などに使用される。野地板に使われる場合、6 尺(1 .8m )× 3 尺(90cm )の合板にくらべると幅が狭いだけに風にあおられたり、滑る危険が少ないが、問題はやはりこの合板との価格競争である。
107 .低ホルム合板
合板のホルムアルデヒド放散量は、JAS の試験に合格したものに、Fl 、F2 、F3いずれかの表示により示されている。試験方法はデシケーター法と呼ばれ、合板から放散されたホルムアルデヒドを蒸留水に吸収させ、その水中濃度を測定する方法で、放散量の平均値および最大値が、基準値をクリアすれば合格とされ、表示の区分に応じてF1 、F2 、F3 のマークが表示される。マークのF は、Formaldehyde の頭文字のF である。
F1 (エフワン)基準は、水中濃度が1 ℓ中、平均値0.5㎎以下、最大値0.7mg 以下のもので、用途の目安としては、気密性の高い建築物の内装材・構造材などである。
F2(エフツウ)基準は、同じく平均値5㎎以下、最大値7㎎以下のもので、用途としては一般の建築物の内装材・構造材などである。
F3 (エフスリー)は、平均値10mg 以下、最大値12㎎以下のもので、気密性が高くない建築物で使われる。
108 . ディメンションランバー(Dimension Lumber )
北米で住宅建築部材として最も一般的に利用されている厚さ2 インチあるいは4 インチ、幅2 インチ以上の製材品の一般的呼称で、具体的には2×4 、2×6 、2×10 、4×4 などを指す。長さは用途によりまちまちである。
樹種としては、カナダのSPF (スプルース、パイン、ファー)、米国南部のSYP (サザンイエローパイン)、米国西部のダグラスファーおよびへム/ファーが主体である。
生産量が多いのはやはり2 × 4 で、基礎フレームや間柱として最も汎用性に富む。2 × 10 や2 × 12 のラージサイズは、従来、床根太としての利用が多かったが、近年はI‐ ジョイストの進出に押されている。
日本のツーバイフォー住宅用としての2 × 4 や2 × 6 製材品は、ほとんどがカナダのBC州内陸部からの製品であるが、輸出企業は節や丸み等の欠点が少ないものを選別してJ ソートと称している。
109 . D1 樹種、D2樹種
日本農林規格(JAS )では、耐久性によって主要な針葉樹をDl とD2 に分けて指定している。Dl 樹種はヒノキ、ヒバ、スギ、カラマツ、ベイヒ、ベイスギ、べイヒバ、べイマツ、ダフリカ(ロシア)カラマツ、その他これらに類するもの、D2 樹種はアカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、モミ、ツガ、ベイモミ、ベイツガ、ラジアタパイン、べニマツ、スプルース、ロッジポールパイン、アガチス、その他これらに類するものであり、D1樹種に指定された樹種はD2樹種よりも耐久性が高いことから、防腐・防蟻処理の基準が一部緩和されている。JAS の中で樹種による耐久性区分はこの分類しかないため、品確法の劣化の軽減に関する項目でも、一部にこの区分が採用されている。
尚、これは「心材」であることが要求され、辺材(白太)が付いたものは認められないので注意を要する。
110 .出石 欠石
実際の材積が送り状の材積より多いことを出石(でごくOverrun )という。これはその国によって材積測定方法が違うからで、日本の農林規格に基づく材積測定と合わないからだ。かつて輸入南洋材丸太の場合は20 %内外の出石があり、輸入米材丸太の場合は10 %内外の出石があるといわれていた。出石は出歩ともいわれる。
なお出石は米ツガ丸太、米マツ丸太にしろ長尺材ほど多く、その分輸入側にとっては有利だということにもなる。なお輸入北洋材丸太の場合は逆に欠石(Underrun )があり、日露間でしばしば問題になり、日本側は改善を申し入れたことがある。欠石は石切れ、とか減石ともいわれる。
111 . 特恵関税
フィリピン、インドネシア、マレーシアなどの発展途上国などに対する経済的支援のための関税制度。
わが国の主要木材・木製品についていえば、マツ属製材、パーティクルボード、繊維板、集成材などに特恵関税が適用されており、その税率は0 %。ただし「かんながけ又はやすりがけをしたもの以外のもの」のラワン等の製材については関税引き下げ幅2 分の1 で5 % の関税がかかっている(通常は10 % )。また合板用単板も引き下げ幅2 分の1 で税率は2 . 5 % (通常は5 % )。合板については特恵が適用されていない。
なお特恵関税には品目ごとに金額上の一定のシーリング枠が設けられており、年度途中でこのシーリング枠を越えた場合は当該年度における特恵関税の適用を停止することとなっている。
112 . NIES 、ASEAN
NIES (ニーズ)は発展途上国の中でとくに工業化が進み先進国を追い上げている新興工業経済地域。アジアNIES といえば、台湾、香港、韓国、シンガポール。
ASEAN (アセアン)はフィリピン、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイの6 カ国が経済協力のために結成した機構だが、ASEAN でもこのところ良質低廉な労働力と外貨の積極的な導入で工業化が目ざましい。
とくにインドネシアでは木材加工に力を入れ合板産業が成長。東マレーシアでも木材加工部門への投資が盛ん。
113 . 70 条基準
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」第70 条に規定されている「住宅の紛争処理の参考となるべき技術的基準」を称している。この技術基準は、指定住宅紛争処理機関において紛争処理委員(主として弁護士)が住宅性能表示制度を利用した住宅にかかわるトラブルについて調停・仲裁を行う際に参考資料として用いられる。住宅のトラブルは、顧客が、実際に居住をし始めた後に、住宅の表面に現れたひび割れや床の傾きなどが発生したことから始まることが多い。しかし、住宅の表面に発生している不都合事象の状況のみで、基本構造部分に瑕疵が存在するかどうかを決定することは技術的に限界があり、ここでは、具体的に発生した不都合現象を、3 段階にレべル分けし、基本構造部分に瑕疵が発生する可能性がどの程度あるかを把握するための目安として設定している。
114 . ノミナルサイズとアクチャルサイズ( Nominal and Actual Size )
ノミナルサイズは呼称寸法、アクチャルサイズは実寸法を指す。北米の製材品取引において、両者は一般的に使用されている。例えばツーバイフォー製材品は、木口断面が2 インチ× 4 インチ=51 mm × 102mm = 5 , 202m㎡の製材品である。しかしこれは呼称寸法であって、実寸法の標準的木口断面は未乾燥材で40 ㎜× 90 ㎜=3 , 600m㎡ 、乾燥材では38 ㎜× 89 ㎜=3 , 382m㎡である。各木口断面積比率は、呼称寸法1 に対し、実寸法では未乾燥材が0.69 、乾燥材は0.65 でしかない。一般的に北米の業界紙等に掲載されている価格や、製材品取引で交わされる価格は、呼称寸法ベースである。呼称寸法で150(ドル)/㎥のツーバイフォー乾燥材を、100㎥取引する際の価格は、150 (ドル)/ 0 . 65 (木口断面積比率・換算率)× 100 (㎥)=23,077 ドルとなるので、呼称寸法を実寸法に換算しないと、8,077ドルの差額が生じる等のトラブルに見舞われる。
115 .バイオマス(biomass )
生態学の分野で、一定空間領域に存する全ての生物体を有機物(生体内でできる物質の総称)に換算した量を示すことばである。そこで、一般的には再生可能な有機物資源である生物体エネルギー資源としての意味合いで用いられる。
木材分野では、「木質バイオマス」として多く使用され、木材チップ、端材、樹皮、間伐材、建築廃材、炭等木材としての生物体エネルギー資源を活用して熱源や発電として利用する取組みが実施されている。これらはゴミ焼却に伴うダイオキシン対策につながることからも大きな期待が寄せられ、各地域で実用化事例が多数見られる。セメント工場での建築廃材チップと石炭の混焼、製材工場での製材端材等利用した発電施設の稼動、国産ペレットストーブの導入等代表的なものである。
さらに、直接的に燃焼エネルギーとすることに加えて、ガス化、アルコール化等による利用への研究・開発が積極的に進められている。
116 . 羽柄材
羽柄(はがら)材は端柄材とも書く。角材以外の製材品で、たとえば小幅板(ヌキ)、タルキ、野地板、ラス下などのたぐいだ。かつての東京の木場問屋街ではこうした羽柄材を扱う問屋のことを羽柄屋と呼んでいた。
しかし、こうした羽柄材の需要の先行きが住宅工法の変化で懸念される状況になった。というのは壁といった“面”の部門が次第に厚い合板などによる耐力壁としてのパネルに転換されつつあるためである。
こうしたパネル化でモルタル壁の下地材としてのラス下の使用が減っていきかねないし、また屋根の下地材としての野地板の分野にも合板や輸入OSB(木削片板)が浸透してきている。つまり製材の際出る、とくに背板からの羽柄材の需要の落ち込みが気がかりで、その背板からの羽柄材にかわって、この背板を集成材のラミナ(挽き板)にしようという動きも出てきている。
117 . 葉枯らし
葉枯らしは、葉干し、穂干しともいわれ、スギ等樹木を伐倒して、枝葉を付けた状態で一定期間林内放置するものである。この処理を行うと、枝葉から水分が蒸散し、樹幹部の含水率の減少を促進し、同時に木材中の成分にも変化が生じると考えられ、スギ黒心材の黒さが和らぐなど材色にも変化を生ずる。
葉枯らしの乾燥効果が著しいのは春季~夏季の伐倒である。当該期のスギ事例で樹幹部の含水率経過は、開始後1 ケ月の間に100 %以上が70 %程度になるなど急激に低下し、その後次第に低下速度は鈍り、2 カ月前後で60 %程度での安定がみられる。このことから葉枯らし期間をいたずらに長くすることは必ずしも得策でなく、林内に長く放置すれば病害虫の恐れもあり、2 ケ月程度が適当とされている。
また葉枯らしは、辺材部と心材部で含水率の低下の違いが見られ、含水率の低下は主に辺材部に限られていて、心材部の含水率はあまり低下しないことに留意する必要がある。
118 .バーコードとRFID
( Radio frequency – Identification )
バーコードは情報機器にデータを正確かつ容易に入力するために誕生した手段である。
バーコードは,バーシンボルとスペースで構成され、予め決められたパターンで0 ~9 の数字を示している。バーコードには多くの種類があり、商品識別のためのJAN コード、物流単位を識別するためのITF コード、EDI と連携するUCC / EAN – 128 コード等が主に利用されている。
木材分野では、北米材、欧州材等製材品、国内大規模製材工場等で商品管理、物流管理の効率化にバーコードラベルが貢献している。
なお、将来的には、一つずつ手作業でラベルを読み取らなければならないバーコードと違い、表面に出ていなくても、電子機器で読み取れ、情報を書き加えられるRFID (電波方式認識と呼ばれICチップに代表されるもの)が、バーコードの代替として物流分野などへの実用化が期待されている。
119 .柱・通し柱・管柱・間柱
柱は、建築物の屋根、床等構造部を支える垂直の部材の総称である。建築部材としての利用からは通(トオ)し柱、管(クダ)柱、間(マ)柱等が主なもの。柱の樹種はスギ、ヒノキ、ベイツガ等に加えて、ここ数年はホワイトウッドと呼ばれる欧州材が主力である。通し柱は、土台から軒桁(ノキゲタ)まで一本の柱で通したもの。建築基準法・令43 条で階数が2 以上の隅の柱またはこれに準しる柱は通し柱とすることが必要になる。部材寸法は12 × 12 、材長6m が一般的である。
管柱は、土台から軒桁までの途中で柱を継いだもの。部材寸法は10.5 × 10.5cm 、材長3m が一般的ですが、高規格な12 × 12㎝ も多く利用される。なお、材長は地域や階数で4m 、3.65m 等も用いる。間柱は、荷重を支えず、壁を作るための 骨組みで管柱等の間に立てる。部材寸法は管柱より細い材料である。3 cm × 10.5cm (又は7.5 cm )、材長3m が一般的に用いる。
120 .パーティクル・ボード
パーティクル・ボード(particle board )は戦後、ヨーロッパにおいて戦争中の森林乱伐により枯渇した木材資源を補うために、森林育成の際に生じた間伐材や林地残材を利用し、復興資材として開発した板材料・削片板。
木材を細かく切りきざみ、小片とし、よく乾かしてからユリア樹脂などの接着剤をスプレーなどで添加し、一定の面積と厚さに熱圧成形してつくる。木材の節、腐れ、狂い、そりなどの欠陥を除くこと、また小径木、林地残材、工場廃材などの低価値の原料から大面積の板材をつくることができるのが特徴。建築の壁下地材、床下地材、屋根下地材(野地板)、家具、弱電機用などに使われる。日本でも昭和28 年頃から生産を開始したが、安い合板が大量にあったため欧米ほど発展を見なかった。しかし合板の熱帯材原料不足を背景に、合板の代替需要として、このところMDF (中質繊維板)などとともに再びクローズアップされた。

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