マンションのLL45直貼りフローリングに「上貼り」は不可─性能が落ちる理由と正しい改修手順

マンションのLL45直貼りフローリングに「上貼り」は絶対不可──遮音性能が落ちる理由と正しい改修手順

【この記事は、マンションのリフォーム実務者、管理組合、そしてLL45フローリングの改修を検討されている住人の方々に向けて、正確な知識を提供します。】

マンションの床リフォームにおいて、「既存の床に新しいフローリングを重ねて貼る(上貼り)」は、工期短縮やコスト削減の魅力的な手法として提案されることがあります。

しかし、既存の床がLL45等級の「直貼り遮音フローリング」である場合、この「上貼り」工法は絶対に避けるべき工法です。

本記事では、「なぜ上貼りが不可なのか」を技術的なメカニズムから詳細に解説し、管理規約を遵守しながら安全にリフォームを成功させるための「正しい改修手順」を解説します。


1. なぜ「LL45直貼りフローリングの上貼り」は遮音性能を低下させるのか?(技術的解説)

結論から言います。LL45の直貼りフローリングの上に別の床材を上貼りすると、遮音性能が維持できないどころか、むしろLL50やLL55レベルに悪化することがほとんどです。

これは、LL45直貼りフローリングが持つ特殊な遮音メカニズムを理解せずに、安易に質量を増やしてしまうために起こります。

1-1. LL45フローリングの遮音メカニズムの基礎

LL45等級の直貼りフローリングは、以下の3層構造によって、階下への「軽量床衝撃音(スプーンを落とした音など)」を効果的に吸収・緩和しています。

  • 表面材(フローリング本体)
  • 緩衝材(裏材): 衝撃を吸収し、振動を遮断する最も重要な部分
  • コンクリートスラブ(下地)

この構造は、緩衝材の反発力と厚みが、表面材の質量と緻密に計算され、最適な振動吸収を実現しています。

1-2. 上貼りが引き起こす「遮音性能低下」の構造的理由

上貼りは、このデリケートなバランスを崩壊させ、以下の深刻な問題を引き起こします。

  • 原因①:緩衝材の機能不全(加重による潰れ)
    新しいフローリング材の重さが加わることで、既存の緩衝材が想定以上に圧縮され、反発力や振動吸収能力が失われます。
  • 原因②:共振現象と太鼓現象の発生
    上貼りした新しい床材と、既存のフローリング、そしてコンクリートスラブの間で、新たな空間と質量が形成されます。これにより、特定の周波数で床全体が共振したり、振動を増幅させたりする現象が発生します。

【専門的なエビデンス】
一般財団法人 建築研究振興協会(GBRC)などの専門機関の実験では、遮音フローリングに上貼りした場合、人の足音に含まれやすい250Hz帯域で18dBもの大幅な遮音性能の低下が確認されています。これは性能がLL45からLL50以上に悪化することを明確に示す、構造的なリスクの根拠です。


2. 実務者が注意すべき「管理規約」と「トラブル」のリスク

遮音性能の低下は、単なる技術的な問題では済みません。マンションリフォームの実務においては、法的・契約上のリスクに直結します。

2-1. 「上貼り」は管理組合に承認されない工事である

ほとんどのマンションの管理規約には、「床の遮音性能は、既存の等級(LL45など)を維持または向上させること」が義務付けられています。

上貼りは性能を悪化させるリスクが非常に高いため、たとえリフォーム業者が推奨したとしても、管理組合に承認されない工事となります。無断で施工した場合、規約違反として原状回復を求められる可能性があります。

2-2. 階下住民からのクレームと訴訟リスク

遮音性能が悪化すると、当然ながら階下住民からの騒音クレームが発生します。

  • リフォーム後の性能調査でLL45を満たしていないことが判明した場合、リフォーム業者や住人が損害賠償原状回復(撤去張替え)の費用を負担するリスクが生じます。
  • 安易な上貼りは、コスト削減どころか、大規模な追加費用人間関係の崩壊を招く、極めて危険な行為です。

2-3. 【誤解】遮音性能付きの上貼り用フローリングを使っても良いのか?

「上貼り専用の遮音フローリング」でも、既存の緩衝材との二重構造が、かえって共振を引き起こすため推奨できません。(メーカー保証外となる可能性にも言及)


3. 【正しい改修手順】LL45直貼りフローリングは「撤去張替え」一択

LL45の遮音性能を確実に維持し、トラブルを回避するための唯一の正しい改修方法は、既存の床材を完全に撤去し、新しいLL45適合製品に張り替えることです。

3-1. ステップ①:既存の直貼りフローリングを完全に撤去する

既存の直貼り材は接着剤で強固に固定されているため、撤去作業には専門的な技術と手間が必要です。

  • 作業内容: 既存のフローリングと緩衝材を剥がし、コンクリートスラブ(下地)に残った接着剤をサンディングなどで完全に除去します。
  • 重要なポイント: 下地処理を丁寧に行うことが、新しい床材の遮音性能を保証する上で最も重要です。

3-2. ステップ②:新しいLL45適合製品を直貼りする

管理規約で定められた遮音等級(LL45など)を満たす新しい床材を選定し、適切な直貼り用接着剤で施工します。

  • 製品選定の基準:
    • 管理組合の承認を得たLL45等級適合の製品証明書(試験データ)があること。
    • マンションリフォームに特化した接着剤を使用すること。

4. 【無垢フローリング木魂の提案】 LL45対応の「撤去張替え」で実現する快適性

正しい「撤去張替え」を選ぶことで、遮音性能の維持だけでなく、住環境を劇的に改善する機会を得られます。

当社(無垢フローリング木魂)では、マンションの厳しい管理規約をクリアしながら、無垢材ならではの快適性を提供するLL45適合の製品を取り扱っています。

特徴 無垢フローリング木魂のLL45製品 上貼りの問題点
遮音性能 LL45適合証明書付きで安心 性能低下、規約違反のリスク大
耐久性 撤去により下地から新築同様に再生 既存の床の寿命に引きずられる
快適性 調湿性・温かみ・経年美化 機能性が付加されず、見た目のみの変化

【選ばれている理由】

無垢フローリング木魂のLL45対応製品は、無垢材の美しい表情を保ちながら、裏側に特殊な高性能緩衝材を複合しており、撤去後の正しい張替えにおいて、多くのマンションリフォームで採用されています。


5. 良くある質問(Q&A)

Q1: 「上貼り専用の遮音フローリング」を使えば、LL45の性能は維持できるのではないでしょうか?

A1: 維持できない可能性が極めて高いです。 上貼り専用品であっても、既存の直貼りフローリングの緩衝材(スポンジ)の機能が、新しい床材の重さで不均一に変化したり、潰れたりします。この「二重の緩衝層」が予期せぬ共振現象を引き起こし、メーカーの想定外の音(特に低音域)が発生するリスクがあります。

Q2: 上貼りによって、遮音性能がLL45からLL50などに悪化するとは、具体的にどういうことですか?

A2: 階下への騒音レベルが大きくなることを意味します。 LL45やLL50という数値は、床衝撃音の遮音等級を示しており、数字が小さいほど遮音性能が高い(静かである)ことを示します。LL45の床材に上貼りすることで性能がLL50に悪化するということは、階下へ伝わる音が大きくなり、騒音トラブル発生リスクが高まるということです。

Q3: どうしても撤去が難しいのですが、他に打つ手はありませんか?

A3: 根本的な解決にはなりませんが、「置き敷き」の遮音カーペットやマットを検討する方法があります。 上貼りが「接着剤などで既存床に固定する」のに対し、置き敷きは床に固定せず敷くだけです。この方法であれば、既存床の性能を悪化させる構造的リスクは低減されます。ただし、置き敷き材のLL等級が管理規約を満たすか、また階下への音を完全に防げるかは、既存床とマットの性能に大きく依存します。

Q4: 撤去して張り替える場合、無垢フローリングはLL45に対応していますか?

A4: はい、適切な製品を選べば対応可能です。 一般的に無垢フローリングは遮音性能の確保が難しいとされますが、現在は裏側に特殊な緩衝材を複合した「LL45適合の直貼り用無垢フローリング」が開発・販売されています。撤去張替えを行うことで、遮音基準を満たしつつ、無垢材ならではの快適性やデザイン性を実現できます。


【まとめ】

マンションのLL45直貼り遮音フローリングの改修において、「上貼り」工法は遮音性能を確実に低下させます。目先のコストと工期と引き換えに、規約違反や騒音トラブルという大きなリスクを背負うことになります。

長期的な安心と快適な住環境を実現するためには、「既存材の完全撤去とLL45適合製品への張り替え」という正しい手順を選んでください。

🔑 LL45フローリングの撤去・張替えに関するご相談はこちら

当社では、管理組合の基準を満たすLL45適合の無垢フローリングを多数取り揃えております。管理規約の確認、製品の無料サンプル請求、お見積もりについては、以下の窓口へ今すぐご相談ください。

木材コンシェルジュ

執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)

前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。

また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。

FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。

株式会社五感 東京都江東区新木場1-6-13 木のくに屋ビル4F 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/

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