「マンションでも、木の温もりを感じる無垢フローリングを採用したい!」
リノベーションで非常に人気の高い無垢フローリングですが、マンションの場合、階下への騒音問題が大きな壁になります。
特に、既存の床構造が直貼り工法だった場合、安易に憧れの無垢フローリングを貼るために二重床工法に変更すると、かえって騒音トラブルを招くリスクがあることをご存知でしょうか?
ここでは、マンションの床構造と遮音性能の基準、そして無垢材を採用する際の注意点を徹底解説します。
👂 マンションの遮音性能を測る「JIS規格」とは
マンションの床衝撃音は、どの建物でも公平に評価できるよう、JIS(日本産業規格)によって測定・評価方法が定められています。
特に重要なのは、衝撃音を2種類に分けている点です。
- 軽量床衝撃音(タッピングマシン使用): スプーンを落とす音やスリッパのパタパタ音など、比較的高い音。主に床材の緩衝材や二重床の構造で対策します。
- 重量床衝撃音(バングマシン使用): 子どもの飛び跳ねや大人の足音など、低い音(振動)。主にコンクリートスラブの厚さと重さで対策します。
試験で想定されるスラブ厚の基準
JIS規格に基づいた建材の試験では、工法によって以下のスラブ厚が目安とされています。
- 直貼り工法:スラブ厚 150mm
- 二重床工法:スラブ厚 200mm
これは、二重床を効果的に機能させるには、直貼りよりも厚い(重い)スラブが前提となることを示唆しています。
建材試験センターHPより
⚠️ 無垢フローリング採用時の「二重床」への安易な変更は要注意!
無垢フローリングは遮音性能がついていないことが多いため、マンションの管理規約(例:LL=45,ΔLL(Ⅰ)-4 )をクリアするために、「二重床」を選びがちです。しかし、既存の床が直貼りだった場合、この選択は大きなリスクを伴います。
リスク1:重量床衝撃音の悪化(太鼓現象)
直貼り工法が採用されているマンションは、もともとスラブ厚が150mm程度と比較的薄い場合があります。このような物件で二重床にすると、以下の問題が起こります。
- 共振の発生: 床とスラブの間にできた空気層が、特定の低い周波数帯で共振を起こします。
- 太鼓現象: この共振により、床全体が太鼓のように振動を増幅させ、重量床衝撃音を直貼りの時よりも大きく階下に響かせてしまうリスクがあります。
スラブ厚が薄い物件で二重床に変更する場合、二重床本来のメリット(軽量音の緩和)は得られても、最もトラブルになりやすい重量床衝撃音の遮音性能はかえって悪化する可能性があるのです。
リスク2:無垢材は「乾燥式二重床」との相性を見極める必要がある
無垢フローリングを二重床で施工する場合、通常は支持脚で床板を支える「乾式二重床」が用いられます。しかし、無垢材は温度や湿度で伸縮するため、下地の支持脚やパネルと組み合わせる際は、無垢材の特性を理解した専用の二重床システムを選ばなければ、床鳴りや反りの原因となり得ます。
✅ 無垢フローリングを諦めない!マンションで採用する2つの確実な方法
既存の床構造を変えずに、無垢フローリングの採用と遮音性能の確保を両立させるには、以下のいずれかの方法を検討しましょう。
1. 直貼り専用の「遮音無垢フローリング」を選ぶ
- 仕組み: 無垢材の裏面に、遮音性能を確保するための特殊なクッション材や防振材を直接貼り付けた商品です。
- メリット:
- 既存の直貼り工法を維持できるため、床高があまり変わらず、天井高への影響が少ない。
- 重量床衝撃音への影響が少ない(共振リスクがない)。
- 注意点: 一般的な無垢材よりも高価で、クッション材の分、踏み心地がフワフワと感じられる場合があります。
- 以下は、踏み心地を改善した直貼り無垢フローリングになります。
2. 遮音性能が担保された「乾式二重床システム」を採用する
- 仕組み: 専門メーカーが、スラブ厚の薄いマンションにも対応できるよう開発した、高性能な乾式二重床システムを採用し、その上に無垢材を貼ります。
- メリット:
- 配管の自由度が高まり、水回りなどの間取り変更が容易になる。
- 無垢材をしっかりと固定でき、直貼りよりも安定した踏み心地が得られる。
- 注意点: 床の高さが上がり、天井高が低くなる。必ずスラブ厚150mmでも遮音等級をクリアできることをメーカーの資料で確認し、管理組合の承認を得る必要があります。
マンションでのリフォームは、「管理規約の遵守」と「既存構造の特性理解」が不可欠です。無垢フローリングという理想を実現するためにも、安易な工法変更は避け、専門家と相談しながら最適な方法を選びましょう。