床暖房と無垢フローリングの相性ってどうですか?とよくご質問いただきます。
質問してくる時点で何か疑問や不安があるのだと思います。
どちらかというと相性は悪いと思いますが、何年くらいその住宅で暮らすのか、いつ頃リフォームするのかにもよります。
ほとんどの方は、長年住む住宅はなるべく補修費がかさばらないようにしたいと思うものです。
無垢フローリングを選ばれる理由として「暖かみがあって使用対応年数が長いから」ということでお選びいただくこともあろうかと思います。
ウレタン塗装をせずに自分達で表面のメンテナンスができる状態にしておくことで何十年とお使いいただくことが可能です。
日本の住宅の寿命は25~30年と言われています。
この事を根拠にかどうかわかりませんが、内装建材もとりあえず30年使えるといっておけばOK的な風潮があります。
とはいえ、30年も持つ新建材はなかなか見当たらないのも現状です。
合板フロアーなんかは15年くらい使っているとで表面塗装がボロボロと剥がれてきます。
床暖房との相性に話を戻しますが、床暖房はシステムであり機械物です。
耐久年数は、どのメーカーとも30年位だと記載されていることが多いようです。
しかし、同じ様な商品でも「10年位しか使えない」ってところと「半永久的に使える」って会社があります。
えらく極端ですが、どちらもデカデカとHPに記載しています。
私は、前者が正解に近いと思います。
床暖房システムの実物を見ると「こんなものなのかぁ・・・」と思われる方がほとんどだと思います。
カタログ上で確認するより、自分の目で見て触って確認していただければと思います。
床暖房採用後、10年とは言わず15年後に床暖房システムに不具合が出たとしましょう。
床暖房システムメーカーの10年補償は既に期限が切れています。
その不具合箇所がパネル部分だとしたら、床暖房パネル交換時に無垢フローリングも貼り替えとなります。
まだまだ何十年も使用できるはずの無垢フローリングが、床暖房システム交換のために廃棄されるということになります。
せっかく長年使えると思っていたはずの無垢フローリングが台無しです。
もちろん、故障した床暖房システムと無垢フローリングはそのままにして別の暖房方法を取るということも可能ですが、
使えないものを放置しておくことは機械部分の腐食が始まると同時に他の部分に影響を与える心配もございます。
そもそも、暖かくて気持ちが良いという理由で無垢フローリング選ばれたのなら簡単に修理ができない床暖房は採用を考えた方がいいかもしれません。
合板フロアーでしか生活したことの無い方には、無垢フローリングの暖かさはわかりません。
もちろん、床暖房システムと無垢フローリングが悪いわけではないのでその時はその時で修繕費用を出すから大丈夫!って
ことなら問題ないのかもしれません。
なかなか余裕をもってローンを組まれる方も少ないと思います。
設計の段階で見た目やデザインも重要ですけど使用部材もとことん見比べてご検討頂ければと思います。
なるべくなら簡単に手の届かない部分に機械物は入れないほうが良いかと思います。
使用部材をよくよくご検討いただくことで日本の住宅寿命も少しは長くなると思います。
無垢フローリングと床暖房

前田 英樹
木材コンシェルジュ
執筆・監修者情報:前田英樹(株式会社五感 代表取締役)
前田英樹氏は、無垢フローリングおよび剣道場床の専門家です。吉野材専門問屋や木材小売業での経験を経て、2008年に株式会社五感を設立。東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂」を運営し、ショールーム「ゆらぎ」では多種多様な無垢材を提供しています。
また、「剣道場床建築工房」を運営し、剣道場の床設計・施工を専門に手がけています。剣道五段の有段者として、国産スギ材を使用した剣道場専用床材を開発し、剣道に適した「弾性剣道場床」を推奨。足腰の負担を軽減し、剣士のパフォーマンス向上と安全性の確保を重視した床づくりを行っています。全国の大学や道場で採用され、高い評価を得ています。
FSCおよびPEFC/SGECのCoC認証を取得し、木材のトレーサビリティを重視。武道学会賛助会員。日本剣道振興協会賛助会員。各種メディアへの寄稿や講演も行い、業界内で信頼されています。
株式会社五感 公式サイト
無垢フローリング専門店木魂: https://www.muku-flooring.jp/
剣道場床建築工房: https://kendoujou.com/