広葉樹の色々 その3

チーク(クマツヅラ科)
チークは、世界の有名木材、とくに熱帯に産するものの仲間で、忘れてはならないものの一つです。天然にはアジアの熱帯のうち、インド、ミャンマー、タイ、など大陸の各地に分布しています。インドネシアのジャワ島には広い面積にわたっての造林地があります。有名な木材なので、東南アジアはもちろんのこと、世界の熱帯各地で造林されています。このチークの天然の産地は、熱帯ではあっても、乾期と雨期がはっきりしている雨緑林帯と呼ばれる地域です。したがって、チークでも熱帯降雨林地帯に植えられたものからの木材は、品質的に劣るようです。

木材
辺材は黄白色で、心材からはっきりと区別出来ます。心材の色は、生育状態によってかなり変化し、金褐色、褐色、赤褐色などです。また黒あるいは紫色を帯びた縞があり化粧的な価値を高めています。チークは耐朽性があり、かつ強さがあるため、大型の船舶(軍艦など)の甲板によく使われています。京都の寺院でチークを使っている所もあります(万福寺)。今ではスライスドベニヤあるいはムクで、内装、家具などに主に使われています。これは、むしろ材面の美しさを利用したもので、かつての使われ方と随分違っています。材面には、ワックスのような感じがあり、脂でこすっていると段々とベトベトして来ます。また、機械油のような臭いがします。熱帯産の樹種としては珍しく環孔材です。これは、雨緑林という乾季、雨季のはっきりとした所が故郷だからでしょう。肌目は粗く、加工はとくにむずかしくはありません。

用途
装飾価値を利用して、家具、キャビネット、建築などに、また造船にも用います。

ハードメープル
この樹種は、メープルシュガーの採取で知られています。これは樹液を煮つめてつくるものです。ハードメープルは1種の樹種ではなく、上述の樹種(シュガーメープル)とブラックメープル(A.nigrum)の2種をまとめて呼ぶ名です。これらは、カナダの東部およびアメリカの中西部、北東部
などを中心としてみられます。日本ではサトウカエデというような呼び名があります。カエデの類の紅葉は、日本では文字通り紅くなるものが多いのですが、アメリカやカナダのカエデはどちらかといえば黄色あるいは黄金色になり、日本とは違った美しさがあります。

木材
辺材の色はやや桃色を帯びた白色で、心材は淡赤褐色ですが、あまりはっきりした違いはありません。ときどき、傷のある部分に緑黒色の條がみられます。重硬で、気乾比重は0.70位です。強く、剛い上、衝撃に対しても強いことが知られています。収縮率はどちらかというと高く、乾燥をするのはやや難しい方です。耐久性はあまり高くないでしょう。肌目は精で、木理は通直のことが多いといえます。また、樹によっては、木理が不規則になっているので、それが、木理を波状にしたり、鳥の眼のような模様にしたりして、美しい“もく”を形づくることがあります。摩耗に対して強いのもこの木材の特徴です。

用途
製材品、単板など、さらに床板(米国では大変好まれる樹種です)、家具、箱、ボーリングのピン、器具柄などによく使われます。耐摩耗性が高いので、ダンスホールの床板用に適しています。木材を乾溜して種々の化学成分を利用する際に用いられる主要な樹種の一つです。旋作し易いので、その製品が多いのですが、日本でも材質の似たイタヤカエデは、ろくろ細工をして“こけし”にすることをご存知でしょう。

バルサ(パンヤ科)
木材の専門家でなくても、また、かなり年少の人々でも、このバルサという名前を知っているのではないでしょうか。この木材は、世界でもっとも軽いものの一つです。そして、模型飛行機の木材の部分にはこの木材が使われていることが多いのです。そういう点で、あるいは木材という意識なしに、バルサという名が、一般の人々に記憶されているのかも知れません。バルサは、現在では張り合わせて大きな板にし、それを飛行機の床材料として用いられていることもあります。さらに、液化ガスを運ぶ大型の船に断熱材料としても大量に使われています。こんな軽くて、軟かい木材がと思われるかも知れませんが、比重が低く、したがって、木材の中には大量の空気が含まれていて、断熱用としては、非常に優れてお
り、また、同じような比重をもった他の材料に比べると、強さがあるからです。材木屋にある木材とは、一寸違った扱いを受けている木材といえます。原産地は熱帯アメリカで、とくに中米の国々から世界の各国に輸出された歴史があります。現在では熱帯各地に植えられています。

木材
辺材と心材の色調差は少なく、白色あるいはやや桃色を帯びた淡褐色です。木理は一般に通直で、肌目は粗です。加工は容易ですが、軟らかいために、逆に刃物はよく研磨したものを使わないと表面がざらつくことがあります。気乾比重は、成長の仕方によって異なり、0.20位のことが多いようですが、この木材の場合軽い程好まれます。

用途
ブイ、救命具類、サンドイッチ構造物の中芯用、断熱材(上述したような)、遮音材など。

 

ビーチ(ブナ科)
北米大陸の東部の比較的標高の低い地域に生育している樹種です。アパラチア山脈の南部地域では、2000m位の所まで見ることが出来ます。フロリダ州の北部にも生育しています。ときには、ほとんど純林を形作ることがあります。オハイオ河およびミシシッピ河渓谷地域に分布するものが最も大きくなるとのことです。処によっては高さ30m、直径3.5mになるものもあります。

木材
日本産のブナの木材とよく似ていて、ほとんど区別はつきません。辺材と心材の色の差はほとんどなく、辺材は淡褐色で、心材は赤褐色を帯びています。重硬で、気乾比重は0.72です。肌目は精で、均一です。乾燥は速く、狂い、表面割れ、木口割れ等が出やすく、また、変色しやすいので、取り扱いに注意が必要です。腐りやすい木材ですから、湿気のあるところでの利用はさけるべきでしょう。加工はかなり容易な方ですが、鋸を噛んだり、孔あけの際に焦げたりすることがあります。釘をよく保持しますが、釘を打つ際に割れることがあります。施削性がよく、また、接着性がよいです。この類の特徴は、家具などの曲げ木が容易なことです。

用途
一番使われる用途は家具でしょう。木工品、器具の柄、ベニヤ、チーズボードなど多くのものがあります。いずれにしても、日本産のブナ類の木材と同じようにして利用出来ると考えてよいでしょう。

ヒッコリー類
本ヒッコリーはカナダと米国の東部にかけて分布しています。また、メキシコにもあります。ペカンヒッコリーは種によって、主に米国の南東部からメキシコにかけて分布するものと東部とカナダ南部にみられるものとがあります。

木材
辺材と心材の色の違いがあります。前者は白色-黄白色で、後者は褐色-赤褐色などです。この類の木材の外観はよく似ており、馴れないと区別しにくいでしょう。木理は、ときに波状あるいは不規則になりますが、一般には通直です。肌目は粗です。木材は重硬で、気乾比重の平均値はホンヒッコリーで0.83、ペカンヒッコリーで0.75とされており、前者の値のほうがより高いです。したがって、より強さを必要とする用途には本ヒッコリーのほうが好まれますが、一般的な用途にはとくに区別はされないようです。この類の木材の特徴はとくに衝撃に強く、また曲げにも強い(アッシュよりも強い)ことです。保存性は低いです。曲げ木が出来ます。切削などの加工性はよく、仕上がり面はよいです。

用途
衝撃に対する抵抗の大きいことが必要な用途、器具の柄、スキーの板や体操のバーなどの運動具などには最も適したものとされています。また、変わったものとしては肉の燻製用の材料が知られています。

ブビンガ (マメ科)
日本の市場でも、比較的目に触れることの多いアフリカ産の木材です。材面の美しさを利用した用途が多く、ローズウッド類と同じような用途に用いられています。アフリカのいわゆる赤道アフリカ地帯を、ナイジェリア南東部から、カメルーン、ガボンを経てコンゴ地域に分布しています。大径材でなければ出来ないようなものに使われます。何だと思いますか、和太鼓の胴に使うのです。小さい太鼓はとも角、大きなものになると日本では材料が得られないのです。はるばるアフリカから送られて来た木材が、アフリカのジャングルの中で使われずに日本の楽器にされ、お祭りに参加しているのも面白いことです。

木材
辺材は淡色ですが、心材の色は、桃色、鮮かな赤色、赤褐色で、紫色を帯びた比較酌不規則な條がみられます。新しい木材の場合には上述のように大変美しいのですが、時間がたつと、赤色を帯びた褐色になっていきます。肌目は精で均一です。木理は通直あるいは交錯しています。気乾比重は0.8を超え、重硬な木材です。心材は耐久性が高く、白蟻にも抵抗性があります。重硬ではありますが、加工は比較的し易いといえます。接着も良く出来、ろくろ細工も出来ます。

用途
ある程度ローズウッド類に似ているともいえるため、同じような用途に用いられます。美術家具、キャビネット、スライスドベニヤ、象嵌などが知られています。これらとともに、日本ではよく室内の装飾品にも使われているようです。

ブラックウォルナッ卜(クルミ科)
一時、わが国でも“ウォルナットブーム”があって、家具、内装、キャビネット用に、大量に使われたことがありました。このためかどうか、米国では、ブラックウォルナットの丸太の輸出を禁止してしまいました。今では、その流行も過去のものとなり、この木材をみることがなくなりましたが、それでも、銘木としての地位はゆるがないようです。ブラックウォルナットに、材面の非常によく似たものが同じ属の中に2種あり(J.californicaカリフォルニアウォルナット、J.hindsiiヒンズウォルナット)、市場ではクラロウォルナットと呼ばれています。これらは上述のブラックウォルナットと材面がよく似ており、区別することは一寸難しいでしょう。ブラックウォルナットは、米国やカナダの東部に分布していますが、現在では、林地が農地に変わるなどの理由で(もちろん、木材としての利用が多いこともあり)、蓄積は非常に少なくなっています。また、クラロウォルナットは、西海岸のカリフォルニアに分布が限られています。

木材
心材はチョコレート色から紫赤色、紫黒色で、一般的には、色は一様でなく、縞状になっていて、美しい模様の材面がみられます。辺材は淡色、それを有効に利用するため染色して使うことがあります。重硬で気乾比重は0.62です。肌目は粗で、木理はしばしば不規則になるので、このことが材面の化粧的な価値を高めます。粘り強く、加工は容易です。

用途
家具、キャビネット、銃床(PEGで処理をして、寸度安定性を増加させることが多い)、楽器用材、ライスドベニヤとして使うことが多い。

ブラックチエリー(バラ科)
サクラの類は北米大陸に約30種あるといわれていますが、そのなかで、木材を生産できる大きさになるのはこの種位でしょう。ノヴァスコシアからミネソタ、南へはテキサス中部、東へはフロリダにわたって分布しています。ニューメキシコ南部、アリゾナ西部にも天然分布があります。さらに、南へグアテマラ、ベネズエラ、ボリヴィアにまで分布しています。

木材
辺材と心材の色の差ははっきりしています。前者は赤褐色あるいは赤色で、後者は淡桃色です。注意すると、日本産のサクラ類のように、不規則ですが、やや緑色をおびた部分がすじ状にあらわれることがわかります。また、材のなかに、日本産のサクラ類同様、ピスフレックスという傷の組織が点々とみられるし、ときには、粘液状の物質をためている小さなポケットがあります。年輪はやや明らかです。やや重硬で、気乾比重は0.56。木理は通直で、肌目は精です。切削などの加工は容易で、また、施削もしやすく、仕上がり面は優れています。耐久性は中庸です。

用途
材面が独特の美しさをもっているので、家具、キャビネット、楽器、高級建具、床板、銃床(ブラックウォルナットに次いで好まれています)、タバコのパイプなどに使われることが知られています。ハムの燻製の材料として、このチェリー類の材がよいといわれます。

 

ホワイトアッシュ(モクセイ科)
プロ野球の愛好者の方々は多いことでしょう。現在では、学生野球の場合には金属バットになっていますが、かつては、硬式野球の場合、バットは全て木製でした。そして、ほとんどのバットはこの属の樹でした。日本の場合には、古い時代には多分、米国からアッシュのバットが輸入されていたのでしょうが、そのうちに国産の同じ属のアオダモ(木材の場合にはF.lanuginosaおよび近縁の種類が含まれる)が使われるようになって来て、現在でもプロ用などの高級品にはアオダモが使われています。このアッシュの類は、野球のバットのみではなく、よく運動具に用いられています。かつてはテニスのラケットにも用いられていましたが、現在木製のラケットを見ることがなくなりました。プロ野球のように、木材を使わなければならないというとり決めがないからでしょうか。市場で取扱われているホワイトアッシュの類の木材には上述種以外にもグリーンアッシュ(F.pennsylvanica)が含まれているとされています。両者ともカナダと米国の北部および東部地方に分布しています。

木材
心材の色は褐色で、辺材はやや淡色あるいはほとんど白色です。このホワイトアッシュが、運動用具によく用いられるのは、重硬で、強く、とくに衝撃に強いことが、古くから知られているからです。気乾比重は0.67~0.69程度です。

用途
強さや衝撃に対する要求の高い用途にしたがって、もっぱら運動具用材として知られています。比重が低いものは、運動具には用いられず、家具などに使われています。合板にもされています。

ホワイトオーク(ブナ科)
面白いことに木材は酒と縁があります。古い時代には、もちろんプラスチック、金属、ガラスなどはないわけですから、酒などの液体を入れるものは木に頼るしかなかったのでしょう。日本ではスギが酒樽になり、欧米では、このホワイトオークの類がウィスキーなどの樽になりました。したがって、スギの木の香が酒の香りとなり、ホワイトオーク類の木材の香りがウィスキーとなっているわけです。かつて、テレビのコマーシャルに「当社のウィスキーを入れて熟成するためにホワイトオークの樹を伐採…」というナレーションとともに大きな樹が倒れていくシーンを写してい
るものがありました。オークという言葉はカシ類とナラ類を意味していますが、ホワイトオークは後者で、日本のミズナラによく似ています。
ホワイトオークと呼ばれるものは、1種類ではなく、10種類を超えます。その上、米国大陸の東部を中心として分布しています。同じ類の木材は、ヨーロッパにもみられます。

木材
辺材の色は白色ないし淡褐色ですが、心材は灰褐色、褐色などです。大きな放射組織があるため、柾目面に美しいシルバーグレインがみられます。重硬で、気乾比重は0.75程度です。一般に収縮率が高いので、乾燥の際には狂いや割れが出ることが多いようです。

用途
家具(欧米の家具用材としては、この類の木材がよく使われており、高級材として評価されています)、床板、一般製材品、船舶、箱、建築、桶、樽(とくにウィスキーの樽に欠くことの出来ないものです)。

 

ホワイトセラヤ、バクチカン(フタバガキ科)
ホワイトセラヤの名称はマレーシア・サバ州で使われており、Parashorea属を総称しています。この属は約10種類以上が知られ、ミャンマー、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどに分布しています。日本には、南洋材の主体を占め、合板用材等としてセラヤ、メランチ類の丸太が大量に輸入されてきましたが、近年は製品輸入になるとともに、森林資源の保続の観点から輸出が禁止され、丸太の輸入は極めて減少したものになっています。

木材
丸太の木口で脆心(ブリットルハート)や濃色の縞が認められることもあります。辺材と心材の区別が明確でありません。木材は淡桃色~桃褐色系を示します。同心円状の濃縞が5~10cm間隔で認められることがあり、この材質の特徴となっています。

用途
淡桃色等色合いが良く、合板、内装材、家具など広範な用途で用いられます。

ホワイトメランチ(フタバガキ科)
約30種あり、スリランカ、インド、マラヤ、インドシナ、フィリピン、ボルネオ、スマトラなどに分布しています。この類の木材の地方名はかなり違っており、その主なものを表に挙げます。ホワイトメランチとホワイトラワンは違います。現在では、サバから輸入されることが多いため、この類の木材のことをメラピというサバでの呼び名で呼ぶことが多いようです。

木材
心材は、淡黄白色、淡橙白色、淡黄褐色などで、辺材はより淡色で、両者の境ははっきりしていません。メランチ類の特徴である同心円状に配列する軸方向細胞間道(樹脂道)がありますが、他のメランチ類に比較して、出現頻度は少ないようです。この類の木材の特徴は、放射組織の細胞の中にシリカの小さい塊が含まれていることです。このため、木材を切削すると、その刃物を早く鈍らせます。切削する際には、ステライト加工刃にすることが望まれ、また、刃の交換を早めにする必要があります。木材の肌目は、レッドメランチに比較するとやや精です。木理は交錯しています。気乾比重は0.51~0.84で、樹種によってかなり差があります。耐朽性は高いとはいえません。また、辺材は虫害にかかり易いです。

用途
他のメランチ類と同様に広範囲の用途に、とくに淡色なため塗装の色合せが容易なことから内装や家具に高い需要があります。

 

マコレ(アカテツ科)
日本に輸入される熱帯材のうちアフリカ材の比率はかなり低いため、余程特別なことがないと、木材が目に触れたり、名前を聞いたりすることは少ないでしょう。そのアフリカ材のうち、日本で知られているものの代表の一つといえます。一般に、スライスドベニヤの形で洋風の家具に使われることが多いでしょう。この木材は、どちらかというと、マカンバあるいはサクラ類のような材面をもっています。多分、最初に、この木材の利用を考えた人達は、これらの木材を思い浮かべながら使っていたことでしょう。産地は西アフリカの熱帯降雨林地域にある国々で、現在、ガーナ、コードジュボワール、ガボンなどが主な輸出国となっています。

木材
心材は桃色、桃褐色、赤褐色で、辺材は白色ないし淡桃色なので、両者の境界ははっきりしています。心材には、しばしば色の濃淡による縞が出ることがあり、そういう場合には装飾的な価値が上ります。肌目は精あるいは中庸で、木理は一般に通直ないし交錯しています。木材には光沢があります。湿気があるところで、鉄に接すると黒く汚染することがあるようです。この木材はやや重硬で、気乾比重は0.67です。組織の中にシリカを含んでいるため、切削する刃物を早く鈍らせます。この木材の微粉は、喉や鼻の粘膜に炎症をおこすので、工場では防ぐための注意が必要です。心材は非常に耐久性があり、また白蟻にも強いといわれています。

用途
家具、キャビネット、建具、スライスドベニヤ、壁パネル、床板、造船、海水用の合板などに使われます。日本ではスライスドベニヤとしての用途が多いでしょう。

 

マホガニー(センダン科)
世界で古くから知られている銘木の一つで、ヨーロッパ諸国が中・南米諸国を植民地にしていた頃には、大量の天然のマホガニーがヨーロッパやアメリカへ輸出されました。したがって、古い文学作品を読むと、マホガニーの椅子とかテーブルなどがよく記述されています。マホガニーには、上述の種類の他に、S.mahagoniが知られていますが、こちらの方は、西印度諸島に産し、かつてはこちらの方が良質とされ、マホガニーとして多く話題にされました。しかし、現在では、ほとんど市場に出てくるようなものはなくなってしまいました。現在、木材として、われわれが入手出来るものは、S.Macrophyllaのみとされています。こちらの方は、中米から南米にかけて分布があり、世界の熱帯各地で、造林されています。なおアフリカンマホガニー(Khara.ivorensis)は同一の科で、木材もマホガニーに似ていますが異なるものです。分布・産地中米および南米のコロンビア、ベネズエラ、ペルー、ボリビア、ブラジルなどに知られています。また、世界の熱帯各地に造林地があります。

木材
辺材と心材の色調差は明らかで、心材は桃色ないし赤褐色で、光沢をもっています。いわゆるマホガニー色といわれるものは、むしろ、かつての西印度産のものにつけられた名でしょう。肌目はやや粗で、木理は通直なことが多いようです。加工はし易く、仕上りは良く、寸度安定性が良い木材として定評があります。

用途
高級家具、キャビネット、楽器、彫刻、スライスドベニヤ、高級器具、理化学器械の箱(古いツアイスの顕微鏡の箱など)。

 

メルサワ、パロサピス(フタバガキ科)
約13種があり、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナム、マラヤ、スマトラ、ボルネオ、ジャワ、スラウェシ、モルッカ、ニューギニアにかけて分布します。フタバガキ科のなかで、もっとも東にまで分布している属です。各産地によって名前が違っており、その国別の一覧を表示しました。

木材
辺材と心材の色の違いはあまりなく、黄白色ないし淡黄褐色ですが、桃色の縞をもっています。このような色の木材は大変珍しく一度見れば忘れないでしょう。この黄白色の地に桃色の縞があるという特徴を活かしてスライスドベニヤにすることもありました。しかし、大気中に長くさらされていると、この縞は褐色化してゆき、地より色の濃い縞となるので、化粧的な価値はなくなってしまいます。散在する軸方向細胞間道(樹脂道)があり、そのことが特徴となって他と区別出来ます。放射組織の中にはシリカの小さい塊があり、その量も多いので、加工のための刃物には硬い金属をつけた上で、刃物の交換を早めにするなどの必要があります。肌目は粗く、木理は交錯します。気乾比重は0.53~0.61(A.aurea)、0.64~0.70(A.cochin-chinensis)などで、重硬な木材です。耐朽性は低いので、接地しての利用にはむきません。

用途
建物の内装用として広い用途があります。建築、床板、家具、キャビネット(かつてテレビのキャビネット用に用いられました)。合板用(パプアニューギニアで、かなり大量の合板がつくられました)。装飾用にスライスドベニヤとして、大量に利用されましたが、現在ではあまりないようです。

 

メルバウ、太平洋鉄木(マメ科)
この木材は日本でも古くから名前がよく知られています。太平洋鉄木という名前は、日本製です。Intsia bijugaは東南アジアから太平洋地域一帯に広く分布し、一番西はマダガスカル島で、一番東はサモア島に及んで生育しています。I.palembanicaの種の分布は重なっていますが、狭い範囲です。パプアニューギニアではクウイラと呼ばれています。両者は良く似ていて区別するのは難しいでしょう。

木材
辺材と心材の色の違いははっきりとしています。辺材は淡黄白色です。心材の色は、褐色、金褐色、赤褐色などで、不規則に現われる濃色の条がでることが多いです。肌目は粗で、木理は交錯しています。材面に油のような感じがあります。縦断面を見ると、道管の溝のなかに黄白色のチョークのような物質が含まれています。湿った状態で鉄に触れていると、鉄を腐食させるとともに、材面が黒く汚れてきますので、この木材を使うときには、乾燥した状態が好ましいです。重硬で、気乾比重は0.74~0.90です。耐久性は高く、防腐剤の注入は困難です。

用途
強さと耐久性の必要な用途に適した木材です。橋梁、土台、床板、構造物、枕木用材として使われてきました。最近では、丁寧に仕上げて、机やイスのような家具用材としても注目されるようになっています。

 

ラミン、メラウィス(ゴニスチル科)
属としてはマラヤ、フィリピン、ボルネオ、スマトラなど、さらにニューギニア、ソロモン群島、フィージーなどに分布し、数種が知られていますが、もっともよく知られているのは上記の種です。マラヤやボルネオなどでは、かなり大量に得られるので、フタバガキ科以外の樹種としては、比較的早い時期から輸出されており、ヨーロッパの木材市場でもこの名前は広く知られています。非フタバガキ科の木材で、日本の市場でも名前の知られている横綱格といってよいでしょう。フタバガキ科の木材がどちらかといえば、合板あるいは建築用材に用いられているのに対し、蓄積が少ないこともあって、家具、内装用を中心にして供給されてきています。今では輸入量も少なくなっているのではないでしょうか。この
木材を、とくに丸太で取り扱うと内樹皮にある厚壁の繊維がバラバラにはがれて、皮膚に刺さり、それが原因で炎症をおこすことがあり、かつて大きな話題となったことがあります。

木材
辺材と心材の色の差はほとんどなく、黄白色です。道管の條が、その中に入っている物質のために赤色になって浮き出ています。乾燥していない状態では、青変菌の害を受け易く、緑色ないし黒色に変色するので、早く含水率を下げる必要があります。そうでないと、この木材の特徴である淡色の材面が活かせなくなり、価値がなくなります。気乾比重の値は0.52~0.78です。加工も塗装もし易く、良く仕上がります。しかし、釘打ちをする際に裂け易いので工夫が必要です。保存性は低いグループに入ります。

用途
内部装飾、家具、指物、器具など、とくに淡色で、清潔感の必要な用途に好まれています。

 

リグナムバイタ(ハマビシ科)
リグナムバイタは、木材でありながら、木材関連業種外で使われ、非常に変わっているといえます。また、世界で一番重い木材であるため、木材にかかわりのない人でも、名前を知っていて、そして多分、ほとんどの人が実物を見たり、触れたりすることがないという点で珍しい木といえます。この木材は、極めて重硬で、しかも、古くから金属などと摩擦するとその熱によって木材中から“ガヤック”と呼ばれる樹脂が滲み出て来て、それが潤滑剤の働きをして、接触している物体間のベアリングの役割をすることが知られています。この性質を利用して、古くから船舶のスクリューのシャフトのベアリング材として、よく使われています。これはリグナムバイタの木口板を、丁度桶のように丸い形にしてシャフトの周りを包むものです。この木材はポンドいくらというように目方で取引されています。天然分布地域としてはフロリダ南部、西印度諸島など、また大陸ではメキシコから中米さらにコロンビア、ベネズエラなどが知られていましたが、現在では、市場材を供給出来る処は少なくなっています。この樹木は元来、あまり大きくならず、また生長も遅いので資源としての将来はあまり期待出来ないでしょう。

木材
心材は木材としては珍しく濃緑褐色で、時には、ほとんど真黒色にもなります。肌目は非常に精、均一で、木理は著しく交錯しています。手で触れると蝋状の感触があります。100℃以上に熱すると中から“樹脂”が出て来ます。この性質がベアリングとして用いられる理由です。気乾比重に1.20~1.35で、常に水に沈みます。加工に際しては、金属の加工機械が使われます。いかに硬いかということがわかります。

用途
主として船舶スクリューのベアリングに使われています。

レッドオーク(ブナ科)
レッドオーク類として取り扱われる種は、上述の種のほかにもあり、代表的なのは次のようなものです。スカーレットオーク(Q.coccinea)、ブラックオーク(Q.velutina)、ピンオーク(Q.palustris)、ウイローオーク(Q.phellos)、シュマードオーク(Q.shumardii)。レッドオークは、米国東部のミシシッピ河渓谷の下流地帯、大西洋岸地域、およびカナダの最南東部に分布しています。レッドオーク類が多く生産される地域は、テネシー、アーカ
ンソー、ケンタッキー、モンタナなどの各州です。

木材
辺材は白色から灰色あるいは淡赤褐色で、心材は桃色から淡赤褐色、ときに淡褐色で、両者のあいだには、とくにはっきりとした差はありません。ホワイトオークとよく似ていますが、材の色に差があるとともに、道管のなかにチロースがないことで、区別できます。木材は硬く重く、硬く、気乾比重は0.70です。乾燥の際、収縮が大きいし、また、割れや曲がりが多くでるので、防止のための注意が必要です。心材の腐朽に対する抵抗性は低いか、中庸程度です。衝撃には強いといわれています。

用途
床板、家具、箱、包装、農器具、棺、木工品、ボートなどが知られています。樽あるいは桶のような液体を入れる用途には、そのままでは使うことが出来ません。少量ですが輸入されており、主として家具の材料とされています。

 

ローズウッド、シタン(マメ科)
上述した3種が、もっともよく知られているローズウッド類の木材ですが、さらにこの属の数種が、ローズウッドとして知られています。ローズウッド類は、世界的によく知られている銘木の一つです。しかし、最近では、一寸色が似ている他の樹種に「……ローズウッド」のような名前をつけていることがあります。本物のローズウッドはこの属の木材だけです。唐木と呼ばれる木材の一つで、もっとも珍重されてきているのは、D.cochinchinensisです。D.cochinchinensisは、東南アジアの大陸に、D.latifolia(イーストインディアンローズウッド)は、東南アジアの大陸とインドネシァに、D.nigra(ブラジリアンローズウッド)は南米(とくにブラジル)に産します。この他に古くからマリンバに使われているのはこの属のD.stevesonii(ホンジュラスローズウッド)で、また、クラリネット用材として知られているのはD.melanoxylon(アフリカンブラックウッド)
です。ワシントン条約で取引が制限されています。

木材
心材の色は、赤色、赤紫色、紫色などで、一般的には、これらが縞になって美しい模様を作ることが多く、ときには真黒なもの(D.melanoxylon)まであります。木材はほとんどが重硬で、気乾比重は1.09(D.cochinchinensis)、0.75~0.90(D.nigra)、0.84(D.latifolia)などです。

用途
材面が美しいことと、高価なことから、高級家具、キャビネット、内装用、器具の柄などに使われます。一般に見られるものはスライスドベニヤとして使われたものでしょう。

 

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