フィトンチッド効果

健康で豊かな生活のために
現代のように科学技術が急速に進歩し、また社会が高度に複雑化したことによって、人間は疎外感や不安をつのらせ、原因がはっきりしない頭痛や不眠、神経過敏などの症伏を訴えたりします。心理的なストレスが健康体を蝕む現代病とも言えます。また大気汚染や都市の一極集中、住環境の変化などが重なりあって、さまざまなアレルギー疾患が増加しています。これらの解決、ストレスの緩和やアレルギーの予防などにフィトンチッドが果たす役割は大きいと言えます。
フィトンチッドに対する関心の高まりによって自然と調和した生活を取り入れる土壌が育ち、フィトンチッドを有効に活用するための多くの活発な研究が重ねられ、産業界においても積極的な利用がなされることによって、健康で豊かな生活が実現されることでしょう。


林産物の有効活用のために
今日のような大量生産、大量消費型の経済構造では生産効率が重視されます。さらにわが国の産業構造は高度化していますから、国際的な価格経済では労働集約型の産業はおしなべてその競争力が低下しています。こうした理由からわが国の林業は衰退しているのが現状です。林業に占める就業人口は減少し、就業者は高齢化し、山村は過疎化が進んでいます。山村と林業経済の社会的地位は急速に低下していると言えるでしょう。 しかし、森林を育て国土と私たちの生活を護るのが林業である以上、経済効率だけを重視するわけにもいきません。また石油に代表される化石資源などは枯渇する恐れがあるものの、林産物は再生が可能な資源ですし、持続的な生産と利用が可能です。フィトンチッドの利用を促進することは林業の振興にも大きな役割を果たすと考えられます。

偉大な森林を護り、健全な森林を育てるために
今日の経済繁栄は、猛烈な速度で進展した技術革新と大量の化石資源を消費する産業構造とに支えられて実現したと言えるでしょう。この繁栄が人間の社会に近代化をもたらしたことは否定できません。平たく言えば私たちの生活をたいへん便利にしたわけです。しかしその一方では、地球温暖化、オゾン層の破壊、熱欝雨林の減少、砂漠化、酸性雨などの探刻な環境問題を抱えることになりました。これらの問題はわが国のみならず地球規模で取り組まなければなりません。地球温暖化は二酸化炭素の濃度が増加することによります。文化的な生活をし、生活水準が高くなるにつれて二酸化炭素は増加すると言われますが、その原因は化石燃料の大量消費と森林破壊とに大別できます。
さらに森林破壊は焼畑、放牧、商業伐採、酸性雨、乱開発といったすべて人為的な原因によるものです。森林には、気象環境の緩和、水資源滋養、自然災害の防止、防火、防風、防霧、騒音防止、大気浄化、野生動物の保護、保健休養、風致保全、教育の場などさまざまな働きがあります。これらの一つ一つが人間の生存に大きく影響していて、欠かすことができません。また森林は文化の形成や都市文明の盛衰にも深く関わってきました。わが国は典型的な森林依存型の文化圏に位置し、古くから『木の文化』を育んできました。森林を敬い身近な生活のなかに森林の恵みを巧みに取り入れてきたのです。国土の約7割を森林で占める森林大国のわが国が、地球規模で解決すべき環境問題に取り組むためには、森林が持
つ公益的機能や多面的価値を再認識し森林文化を継承すること、すなわち森林を保護し、健全な森林を育成することが必要だと言えます。
多くの人々がフィトンチッドへの関心を通じて森林や木に親しみ、森林の偉大さや大切さを再認識することが、森林を護り健全な森林を育てることに繋ると考えられます。

フィトンチッドの主な3効用
フィトンチッドを私たちの身近な生活のなかに取り入れることによって、さまざまな効用が得られます。それはまさに森林の力と言えるでしょう。
1.リフレッシュ・・・・森林浴の爽快感はどなたでもご存じだと思います。 自律神経の安定に効果的と言われ、肝機能を改善したり 快適な睡眠をもたらすことも知られています。

2.消臭・脱臭・・・・・・森林のなかに入ると爽やかな空気が広がるのはフィトン チッドの消臭作用です。身近な生活臭に効果的です。

3.抗菌・防虫・・・・・・食品への防腐、殺菌を始め、部屋や浴室のカビ、家ダニ や白蟻などへの防虫にも効果的です。  抗菌作用は人体を蝕む病原菌にも有効です。人体に安全 な天然物質ですから、副作用の心配がなく穏やかに作用します。

フィトンチッドってなあに
緑にあふれた森林のなかに入って行くと爽やかな空気が広がります。そしてしばらく歩いているとかすかな香りに気かつきます。このいわゆる森林の香りの正体がフィトンチッドです。これは森林の植物、主に樹木か作りだして発散する揮発性物質で、主な成分はテルペン類です。そして揮散している状態のテルペン類を人間か浴びることを森林浴と言います。森林浴も最近ではずいぶんと私たちの生活の中に定着してきたようです。フィトンチッドはまさしく森林の精気です。

フィトンチッドを発見したのはだあれ
樹木か光合成を行うことは皆さん良くこ存じだと思います。樹木か生きていくために必要な基本的な活動で、太陽の光エネルギーを利用して炭酸ガスと水から炭水化物を作り酸素を放出します。さらに樹木は二次的にフィトンチッドなどの成分を作りだします。フィトンチッドには、昆虫や動物に葉や幹を食べられないための摂食阻害作用、他の植物への成長阻害作用、昆虫や微生物を忌避、誘因したり、殺虫、殺菌を行ったりするさまざまな働きがあります。土に根さして生きる樹木は移動することができません。そのため外敵からの攻撃や刺激を受けても避難できませんから、フィトンチッドを作りだし発敢することで自らの身を護るわけです。1930年頃旧ソ連のB.Pトーキン博士はこの植物の不思議な力を発見し、フィトン(植物が)チッド(殺す)と名づけました。

人に有益なフィトンチッド
フィトンチッドは他の生物に対して攻撃的に作用するわけですか、人体に対しては有益で私たちの生活に広く有益であることは経験的に認知されていました。そもそも森林や木に神秘的で不思議な力があることは昔から良く知られていました。そして日本人はフィトンチッドの持つ効用を生活の智恵としてさまざまな形で活用してきたのです。たとえば柏餅や柿の葉寿司はフィトンチッドの抗菌作用や防腐効果を利用したものですし、五月の節句の菖蒲湯はフィトンチッドの疲労回復と精神を安らかにする効果を活かしたものです。まろやかな味と防腐効果のために日本酒の樽に杉材を用いたり、白蟻などか寄りつかないように家を建てるときにヒノキやヒバの材を使ったり、いろいろな工夫や応用がなされています。こうした長年の経験から得られた智恵か近年になって科学的な視点で見直され、さまさまな成果をもたらしています。

森林生態系に重要なフィトンチッド
森林のなかでは生き物どうしがさまざまな交流を行っています。なにも競争だけではありません。仲間どうしで団結したりお亘いに助け合ったりすることもあります。なかには寄らば大樹の陰を決め込んでいるちゃっかり者もいます。こうした森林のなかでの賑やかな交流はフィトンチッドのような生体成分を通して行われています。樹木が作りだし発離するフィトンチッドは自らの身を護るだけでなく、他の生物にさまざまな生理作用をもたらすからです。森林のなかで行われているさまざまな交流の構造や仕組みを森林生態系と呼びますが、フィトンチッドは森林生態系のなかで大変重要な役割を果たしていると言えます。

精油の抽出とフィトンチッドの今後の利用
フィトンチッドを利用するためには樹木の葉や材から蒸留などの方法で精油を抽出します。精油を抽出する隙には、間伐材、廃材や製材時に出るおが屑などが使われます。こうして採取された精油は、食品に使われる香料を始め芳香剤、入浴剤、石曲、化粧品、育毛剤や口腔内消毒剤などの生活雑貨品もしくは医薬部外品として、さらには消臭剤や酸化防止剤として用いられます。また消炎剤、去痰剤、健胃整腸剤などの医薬品の原料としての利用も進められています。これらの利用は人体に有効な成分を濃縮して内服、経皮という形をとりますが、近年になって、空気中に放出され拡散したフィトンチッドが人体に好影響を及ぼすことがわかり、古くから伝わるわが国の書道(聞香療法)や西洋のアロマテラピー(芳香療法)が注目されるようになりました。いわゆる香りの効用と言えるもので、現在でも多くの研究が進められています。こうした傾向は森林浴の定着と無関係ではありませんし、現代のようなストレス社会ではストレスの緩和と心に安らぎを与えてくれるものを人間が本能的に求める結果とも言えるでしよう。
したがって今後フィトンチッドは臨床への応用や院内感染対策などの医療現場での活用、建材や空調への応用による居住環境の改善など幅広い
展開ガ期待されます.さらに合成農薬はその残留性が環境や人間に悪影響を及ぼし深刻な問題となっていますが、天然殺虫剤や天然農薬の開発にフィトンチッドの果たす役割は重要です。また畑作物や果実の収積量増加のために利用するなどフィトンチッドヘの期待は高まるばかりと言えます。

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